- 作者: 茨木のり子
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2010/01/30
- メディア: 単行本
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先日、ウチのスタッフと文学や、詩歌の話で盛り上がった。…私は、文学少年だったもので。(^J^)
ふっと思い出したこの詩。
タイトルに惹きつけられ、内容に平和のありがたさが身にしみる。
その全文を紹介しよう。
わたしが一番きれいだったとき
茨木 のり子
わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした
わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達がたくさん死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった
わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差しだけを残し皆発っていった
わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った
わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり
卑屈な町をのし歩いた
わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった
わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった
だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのように
ね
…いいなあ…。こんな詩、一生に一度でいいから書いてみたいなあ。この詩もいいよね。
POETRY〜『感』を磨け!…『自分の感受性くらい』(茨木のり子)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20080421