「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

BOOK〜実篤文学の真髄!…『馬鹿一』(武者小路実篤)


今日のブログが、記念すべき1900日目!足掛け6年、よく続いてきました!(-^〇^-) 毎日読んでくださる皆様のおかげです。ありがとうございます。

さて、私が大尊敬している作家・白樺派武者小路実篤。(^。^) 時々氏の本を読むと元気になるのだ。この本は何度反復したことか!


BOOK〜人間賛歌の名作!…『真理先生』(武者小路実篤
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20091127


そして実篤の文学の真髄だと私が思うのがこの本、「馬鹿一」だ。この本も何度読んだことか。十数年ぶりに読み返してみるとまた新たな感動がある。


周りから馬鹿にされようと、一心不乱に絵を描く老人、馬鹿一。馬鹿一とは通称のことである。雑草や石の絵を黙々と描いている。誰からも評価されず、認められずとも彼は描く。自然を愛し、絵を愛し、孤独を愛し、石や雑草を愛する馬鹿一。そして彼のひたすらな努力、純粋さがやがて身を結ぼうとする。


中学の頃、馬鹿一に憧れた。馬鹿一のようになりたかった。そして再読してみるといまでも私の思いは変わらない。自分の原点のような本だ。その中の一部を紹介しよう。




「彼の羨望」より


「今日は僕にとって忘れられないう日になった。僕は画はどう言う風にかけばいいかを今日本当に知ることができた。僕はいままでの画に満足できなかった元因がわかった。ぼくはあの老人画を最上のものと思っているわけでもないし、ああ言う画をかきたいとも思っていないが、あの老人の不滅の仕事は心をうたれた。あの誠実さ、あの一心さ、あの自分の目を信じ自然を見て、全神経で肉薄して、その他のことを忘れきっている点には、大いに教わる処があった。僕は自分の画の欠点が何処にあるか、本当にわかった。自分の足が地面にくっついていつもりだったが。根がはる処までいっていなかった。あの老人の仕事には、根があり、それが自然の無限の深さにある生命の泉に達していて、そこからあの味が出ているのだ。僕のは上っ調子すぎた。見られ方に気を奪われすぎていた。今日は本当にいい日だ。ぶつかるものにぶつかった。



「馬鹿一」より


道端で雑草を折りとって持っていくと、馬鹿一はすっかり喜んで「そうか、それはどうもありがとう。本当にこれはすばらしい。早速写生しよう。どうもありがとう。僕は今までにこの草を何度か見たが、まだこの草の美しさを十分知ることが出来なかった。君のおかげで、この草の美しさを知ることが出来るのは、ありがたい」そして、紙切れに鉛筆で詩を書いて見せた。


「お前は道ばたに落ちてきて、詩人の処にゆきたいと願っていた
すると一人の男が来て、お前の無言の言葉を聞いた
そしてお前を拾って、詩人の処に持って来た
お前は無言で詩人で御礼を言ってくれと言う 
お前をここまで運んでくれた人に
お前は遂に詩人の処に来た お前は遂に安住の地を得た
千年たつと、お前は宝石に化するであろう」


「ある島の話」

その島はあまり大きくないしまで、人口も千人あまりで、皆半農、半漁の生活をしていますが、しかし皆、学者であり、芸術家であり、すべての人が、何か一つの信仰を持っているらしく、人相も悪い人には一人も逢えなかったと言う不思議な島です。一度人相の悪い男に逢ったと思ったら、それは鏡に写った自分の顔だったには、がっかりしました。


その他「美人」「優しい心」「天衣無縫」「二老人」など。


実篤の人間礼賛の東洋的な思想は、ノーベル文学賞に匹敵すると思うのは私だけだろうか。私の座右の書です。人間万歳!(^。^)