「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

BOOK〜『ゆびさきの宇宙 福島智・盲ろうを生きて』

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この本はスゴイ!すご過ぎる!おそらく今年の本のベスト3に入るだろう。この本というよりも、福島智という一人の人間に惹きつけられた!\ (◎o◎)/!

出会いはふっと見た、テレビでの映像。爆笑問題の二人が番組で福島氏と話している様子だった。盲ろう者として初めて大学に進学、道を切り開き、いまは東京大学先端科学技術研究センター教授だ。米国の雑誌『TIME』でアジアのヒーローとして、松井秀喜坂本龍一オノ・ヨーコ朝青龍らとともに紹介されたこともある。彼の壮絶な人生と彼のメッセージはズドン!魂の深いとこに響いた!そのエッセンスを紹介しよう。


目が見えず、耳も聞こえない。ヘレン・ケラーと同じような障害をもつ東大教授・福島智。羽をもがれるようにして、光と音を失って育つ。三歳で目に異常が見つかり、四歳で右眼を摘出。九歳で左の視力も失う。だが、やんちゃで白い杖で動き回り、柵を越え、ブランコに乗り、ジャングルジムで遊んだ。トランペットやピアノが好きで作曲もした。中学生になって、初めてサイモンとガーファンクル『スカボロー・フェア』を聴いた感激。その哀しく美しいメロディーと切ない歌声に、音には色彩があり光があると知る。

そして十四歳で右耳、そして十八歳ですべての音も奪われ盲ろう者となる。
無音漆黒の世界にたった一人。地球からひきはがされ、果てしない宇宙に放り出されたような孤独と不安。
盲ろうになって、一番の苦痛は、「見えない、聞こえない」ことそのものではなく、「人とコミュニケーションができないこと」だった「コミュニケーションは魂にとっての酸素、水。それなしではまるで「牢獄」にいるようです」

それを救ったのが母の考案した指点字指点字通訳」の実践だった。盲ろう者として初めて大学に進学、いくつものバリアを突破してきた。そして恋も結婚も…。でも、生きること自体が戦いだ。
「いつもリングに上がって戦っているようで。いいかげん、降りたくなるよなあ」
落語とSFを愛し、ユーモアと切なさをもつ不思議な人。彼に引き込まれ、追いかけながら、考えた。生きるって何だろう…。



・世界的には、人口数千人から一万人に一人の割合で「盲ろう」の人がいるという。日本には一万数千人から二万人前後いると推定される。盲ろう者の多くは高齢者で、在宅がほとんど。支援も受けられないまま、だれとも話さず、外出もせず、暗い海の底にいるのではないか。何とかしたい。福島は、地方銀行協会の講演で、「いきなりですが、盲ろう者福祉の増進のために、利子の一部を盲ろう者支援のための寄付にあてるような「ヘレン・ケラー・ファンド」のようなものはできないでしょうか…」と呼びかけたこともある。盲ろうは、感覚器における全身性障害です。コミュニケーションや移動に全介助が必要だということです。盲ろう者は、内部の戦場体験をしている。この世界からの実質的な「消滅」と「出現」を繰り返している。それはたったいまもです


・九歳で失明したとき、祖父が「神も仏もないのか!やぶ医者めがっ」と怒り悲しんだ。「そうしたら智が電話でおじいちゃんに、「おじいちゃん、もうやれるだけやってこうなったんだから仕方がないんだよ。世界でいちばん偉い先生がみても、悪くなるときは悪くなるんだよ。もうすんだことをいうよりも、これから先のことを考える方が、大事やと思うんや」というたの。おじいちゃんは、「九歳の子が、そんなこと言えるんか、それは親が教えたんか」というて、また泣いてね」と母・令子は語る。


・僕は何日も何日も考えた。なぜ僕だけがこういうふうに苦難を与えられるのか。そうしてあるところに到達した。それはもし、神様がいるなら、いままで聞こえていた耳、見えていた目、それをもって僕をこういう状態にしたのは何か、これには深い意味がある。この世の中には、病気とか、薬害とか事故で僕ときっと同じ状態の人がいると思う。僕はこの苦しみをその人のために、役立たせようとされているのではないか、というふうに思えたんだ。


・智は、沈黙を許さなかった。「とにかくしゃべってほしい」。今日のニュース、受験、家族のこと、これからの人生…。「沈黙もコミュニケーションのひとつだけれど、彼はそれを許さない。何かしゃべれ、と。「沈黙は拷問」だといって」それほど、盲ろうになった初期の智は、だれかと話していないと不安だった。


・福島に、自殺を思ったことはないのですか、と当時の気持ちを尋ねると、「それはないと思います。あわてなくても、いずれ、みんな死にますから」と答えた。福島は、苦しみの末、自分には「使命」があると考えて、「生きる」ことにする。


・福島が光成沢美と個人的に会うようになって三度目の夜、学芸大学近くの焼鳥屋でプロポーズを切り出した。いつものゆに「まずビール」のあと、焼酎のお湯割りを二杯ほど飲んでいた。
「僕は君と結婚したいと思うけど、君はどう思うかね?」 「……!」 「君も結婚したいと思うなら結婚しよう。したくないなら、去れ」

去れ?これがプロポーズ?今も光成は思い出すと笑ってしまう。だがすんなり結婚できた訳ではない。
差別で特に深刻なのは三つ。部屋を借りること、就職や仕事、そして結婚です。カミさんと結婚するとき、広い意味での心のバリアが光成の家族には当初ありました。相手の男は目も耳も悪い。大学院は出たけれど、仕事は非常勤講師がポツポツあるぐらいで正規の仕事は決まっていない。光成に、最終的に親の反対があっても一緒になるかどうかの判断は、君がすることだといいました。

予想される質問(経済や住居、仕事や子どもなど)への答えを準備しておいて、立板に水のごとくしゃべりまくって、虚実おりまぜつつ…。
そして、「私は結婚してくれとお願いしているわけではありません。結婚したいと思っているし、彼女もそう思っています。それだけのことです。彼女がやめるというなら、私には候補は他にいくらでもいますから」といったんです。


・08年、博士号を授与されたお祝いの席。「九歳で失明し、十八歳で聴力を失って全盲ろうになりました。九年ごとに何かを失って。二十七歳でビールの飲みすぎで腹が出てスマートさを、三十六歳で髪が薄くなって若さを失って。でも四十五歳で博士号を得て、これからは何かを得ていく人生になるのかなと思っています」


生きること自体が、この世に生を受けた人間として、もっとも重要な仕事だと思います。それは最重度の障害のある人も含めすべての人にとって、もっとも意義深い仕事ではないでしょうか。暗い宇宙に浮かびあがる地球は、虚無の空間にただひとつ存在する、いのちにあふれた青く輝く神秘の宝石です。地球が生まれておよそ46億年、生命の萌芽が発生して三十数億年。いまこの惑星は生命に満ちている。65億人の人間を含む175万種類の生命がいる。こう考えると、なぜ私たちがいま生きていて、この世界や宇宙の存在を認識しているのか、それ自体、理屈を超越した奇跡的なことだと思える。人間が存在する「意味がある」とするなら、その意味はまさにその存在自体にすでに内包されているのではないか。もしそうなら、障害の有無や、人種、男女など個人のさまざまな属性の違いなどほとんど無意味なほど、私たちの存在はそれ自体で完結した価値をもっている。でも、私たちは日常的な問題に突き当たり、現実劇な課題にとりくむとき、ついそのことを忘れてしまいがちです


盲ろうになって、神に手が届くような感覚をもちました。見えない聞こえない。宇宙空間が私の側に広がっているので、手をのばせばすぐそこにある、何者かとつながっているような気がする。虚無と孤独がすぐそこにある。通常の信仰という意味ではなく、なにか自分を越えた存在がある、と体験的に感じます。


・2006年富山市立杉原中学校との質問のやりとり。

Q 福島先生のように人生をいきいきと過ごすにはどうしたらいいですか?

福島 「私が人生をいきいきと過ごしているかどうかはわかりませんが、盲ろう者になってつらかったとき、そしてその後の人生において、私に生きる上での力を与えてくれたものはいくつかあります。その代表的なものは、

1 ユーモアのセンス 2 常識にとらわれない自由な発想 3 自分の存在つまり自分が生きていることには、なにか必ず意味があるにちがいない、と確信すること、の三つです。」


Q 人生で重要なことは?

福島 「人生で大切なことや、ものはたくさんあると思います。みなさんだったら学校での成績も、クラブの活動も、友だちとの関係も、新学も…とこれらすべて大切でしょう。でも本当に、本当に重要なことは、おそらくたった一つだけで、それは「生きること」、つまり人生そのものです。そして、自分が生きることが大切であれば、当然同じ人類である他の人が生きることも大切です。逆に言えば、「生きること」ができていれば、「人生というテストの点数」は、それだけでももう90点くらいだと私は思います。他のいろいろなことは残りの10点くらいのことです。小さなことにくよくよせずに、自分の人生の主人公は自分だという気持ちで思い切って生きてください」


ん〜…深い…。人間ってすごいなあ!生きるって大切なことなんだね。福島先生の大ファンになりました。絶対、おススメ!(^ム^)


爆笑問題のニッポンの教養 「わたしは ここに いる」 福島智
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20090609.html
福島研究室 バリアフリープロジェクト
http://bfr.jp/

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