- 作者: 梶原しげる
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/01/01
- メディア: 新書
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敬語を正しく使って嫌われた首相もいれば、「タメ語」連発で愛される人もいる。敬語は必要に応じて使うべき「武器」なのである。「すべらない」敬語はどう身に付けるのか?そんなツボとコツが凝縮された一冊。そのエッセンスを紹介しよう。
・私たちに必要なことは敬語を正しく使いこなす知恵、時にはあえて使わない知恵を身につけること。敬語とはコミュニケーション力向上のための武器であると考えています。正しい敬語さえしゃべれればそれでいいとは考えていません。
・今までは、尊敬語、謙譲語、丁寧語の3つだったが、2007年の国の文化審議会の「敬語の指針」では、五種類に分かれるという革命的変化が起きた!尊敬語、謙譲語?、謙譲語?(丁重語)、丁寧語、美化語の五種類に分けている。
文化審議会 「敬語の指針(答申)」
http://www.bunka.go.jp/1osirase/bunkasingi_keigo_tousin.html
・丁寧語
「です・ます」型。「話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの」。さらに「ございます」を加えれば完璧です。
・美化語
「お酒、お料理」型と言われていて、「ものごとを、美化して述べるもの」。
・「指針」は全体として、「敬語表現」についてこれまで以上にストライクゾーンを広げている印象です。「とんでもございません」という言葉遣いは、これまでは×でした。「とんでもない」全体で、ひとつの形容詞。それを「とんでも」と「ない」をぶった切って、「ない」を丁寧語の「ございます」の否定形「ございます」にするのは、それこそとんでもない!しかし、新しい「指針」では、「とんでもございません」を正解にしています。
・日本には、古来より敬語があったからこそ、身分を超えた交流があったといわれます。万葉の時代から平安、江戸に至るまで、身分社会であったわが国で、最上位の天皇から、最下位の貧民に至るまで、互いにコミュニケーションしあった様子が、様々な文献に記されています。このようなことは西洋の封建社会ではありえないこと。敬語というシステムがあったからこそ、双方納得して、安心して話ができたのだ。
・三代名人に学ぶ技(久米宏、みのもんた、小倉智昭)がオモシロイ!
みのさんは、ラジオにおいては久米さんとは対照的に、敬語使用頻度が低いのが特徴です。テレビでは、敬語と非敬語を巧みに使い分ける名人芸を見せています。
例えば…
「皆さん、どうお思いになりますか(尊敬語)?いいですか(丁寧語)、はっきり言います(丁寧語)。天下りを繰り返し、そのたびに何千万もの退職金をもらって霞ヶ関界隈を闊歩する元高級官僚。ほっとけない(非敬語)!(画面指差し、怒りの表情で)あんただよ!(タメ語)!」
「おやまあこちらのお嬢さん(美化語)(どう見ても70代後半)、どちらから(「どこ」の丁寧な言い方)?館林?閑静ないいところですね(丁寧語)。え、死ぬ前に一度、私の顔を見ておきたかった(非敬語)?」嬉しいことおっしゃっちゃって(尊敬語のカジュアルな言い方)もう。はい、これお渡ししましょう(謙譲語?+丁寧語)ねえ(と、お礼代わりの図書カードを渡す)
・小泉元首相は、ひとつひとつのフレーズは極めて短い。非敬語と敬語を平気で同居させ、違和感を与えず、逆に、話をダイナミックに盛り上げる。
「(少々むきになった感じの表情で)だから、郵政民営化って言ってる。金の流れを変えないと国は持たない(非敬語)。(ここで、改まった大人の顔に戻り)私はここが、今の日本にとって最も大事なことだと申し上げているんです(謙譲語?+丁寧語)」
「福祉、大事。教育、もちろん。おんなじように郵政民営化、大事なんです」
・安倍元首相は、よく言えば誠実で上品な感じは十分。なのに、説得力がない。人間味を感じない。話しが遠い。敬語が完璧であっても、一本調子だと心に響かない。
「えー、その御質問に関しましては、法律の手続きにぃ、のっとりまして、ですね、えー、しっかりと、お答えをした、と、ま、いう風にですね、えー、申し上げた、と、おー、いうわけでございまして、えー、この国が、美しい国といなる礎としての形をですね、築いて参りたいと、まあ、このようにお答えをさせていただくと、おー…」
・テレビを見ているとやたらと不祥事の謝罪会見を目にします。重大な過ちを詫びる時、敬語がめちゃくちゃだと、それだけで非難されます。そもそも、心から反省しているなら、二分や三分しゃべる分の謝罪文くらいは暗記しろ!前を向いて、記者の目を見てしゃべれ!と全国からテレビに向けて突っ込みが入っていることでしょう。謝罪はその態度はもちろん、言葉自体に誠意が感じられないと逆効果です。
決まり文句なだけに、誠意も敬意も伝わらず、被害者の感情を逆なでしがちなのが、「お詫びしたいと思います」です。「したいと思う」とは、今、お詫びしている、のではなく、今後、お詫びしていこうかな、どうしようかなあと未来の願望を述べているように聞こえるので被害者はもちろん、一般視聴者も腹を立てるのです。
「お騒がせをし、申し訳ございませんでした」という人もいますが、これもとんでもない言い方です。「こっちは騒いでいるんじゃない、怒っているんだ」と言われて当然です。
「私どもの不注意により、深刻な事態を招き、多くの被害者を出しましたこと、心よりお詫びいたします。ただいまは、何をおいても被害者の救済に全力を尽くし、あわせて原因究明を行っております。これ以降につきましては、情報が入り次第、被害者のご家族の皆様、報道関係者の皆様にお伝えしてまいります。ご迷惑をおかけし、本当に申し訳ございませんでした」
と、謝罪とあわせて責任の所在、原因究明に関する情報を開示する旨、心のこもった言葉で、簡潔に伝える事が大切です。そこに過剰敬語は無用です。
ん〜使えるなあ…!(^_^;)敬語が苦手だから身につけなきゃ!オススメ!
梶原しげるのオフィシャルサイト
http://www.creative30.com/kajiwara/
BOOK〜会話力のアップに!…『図解版 口のきき方』(梶原しげる)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20080207