- 作者: 渡辺京二
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2005/09/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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…参った…。(ーー゛) この本にはお世辞抜きで感動した…。(T_T) 不覚にもジワーっと涙が溢れそうになった…。なぜなら私たちの先祖の古き良き文明が喪失してしまったという無念さと、それが異国人によって活き活きとした表現されている姿がこの本でイメージ出来たからだ。文庫本でも2,071円で604ページという高価で大作なのだが、早くも今年のベスト10には間違いなく入るだろう。(^◇^)
一つの文明が滅んだのである。一回かぎりの有機的な個性としての文明が滅んだのだ。それを江戸文明とよぶか徳川文明とよぶか、歴史学はそんなふうには日本の近世を見ていないから、いまのところ呼び名はどうでもいい。しかし、そのように呼びたくなるほど、われわれにとっての大きなもの、つまり文明が、いつしか喪失してしまったのだ。
昭和を問うなら開国を問え。そのためには開国以前の文明を問え…。幕末から明治に日本を訪れた、異邦人による訪日記を読破。日本近代が失ったものの意味を根本から問い直した超大作で1999年度和辻哲郎文化賞受賞の名著。そのエッセンスを紹介しよう。
・「日本は地上で天国あるいは極楽にもっとも近づいている国だ。その景色は妖精のように優美で、その美術は絶妙であり、その神のようにやさしい性質はさらに美しく、その魅力的な態度、その礼儀正しさは、謙虚ではあるが卑屈に堕することなく、精巧であるが飾ることもない。これこそ、日本を、人生を生甲斐あらしめるほとんどすべてのことにおいて、あらゆる他国より一段と高い地位に置くものである」 英国の詩人 エドウィン・アーノルド
・「この町でもっとも印象的なのは男も女も子どもも、みんな幸せで満足そうに見えるということだった」
「この民族は笑い上戸で心の底まで陽気である。不機嫌でむっつりした顔にはひとつとて出会わなかった。彼ら老若男女を見ていると、世の中には悲哀など存在しないかに思われてくる」 エルギン卿使節団 オズボーン
・「日本の女性は賢く、強く、自立心があり、しかも優しく、憐れみ深く、親切で、言い換えれば、寛容と優しさと慈悲心を備えた救いの女神そのものである」 英国人写真家 ポンティング
・「私はこれほど自分の子どもに喜びをおぼえる人々を見たことがない。子どもを抱いたり背負ったり、歩く時は手を取り、子どもの遊戯を見つめたりそれに加わったり、たえず新しい玩具をくれてやり、野遊びや祭りに連れて行き、子どもがいないとしんから満足することがない。他人の子どもにもそれなりの愛情と注意を注ぐ。父も母も、自分の子に誇りを持っている。」 イザベラ・バード
・「日本人は私がこれまであった中で、もっとも好感のもてる国民で、日本は貧しさや物乞いのまったくない唯一の国です。私はどんな地位であろうともシナへ行くのはごめんですが、日本なら喜んで出かけます。」 エルギン卿使節団 オリファント
・「日本はこの旅行全体を通じ、歩きまわった国の中で一番美しい」 ボーヴォワール
・「私はこれまで、容貌に窮乏をあらわれている人間を一人も見ていない。子供たちの顔はみな満月のように丸々と肥えているし、男女ともすごぶる肉づきがよい。彼らが十分に食べていないと想像することはいささかもできない」 ケンペル
・「彼らはよく肥え、身なりもよく、幸福そうである。一見したところ、富者も貧者もない。これがおそらく人民の本当の幸福の姿というものだろう。私は時として、日本を開国をして外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所以であるかどうか、疑わしくなる。私は質素と正直の黄金時代を、いずれの他の国におけるよりも多く日本において見出す。生命と財産の安全、全般の人々の質素と満足とは、現在の日本の顕著な姿であるように思われる」。 ハリス
・「日本の農業は完璧に近い。自分の農地を整然と保つことにかけては、世界中で日本の農民にかなうものはない。私はいままで、このような立派な稲、このような良質な米を見たことがない」 オールコック
…詳細は、「陽気な人々」「簡素と豊かさ」「親和と礼節」「労働と肉体」「自由と身分」「裸体と性」「女の位相」「子どもの楽園」「風景とコスモス」「生類とコスモス」「信仰と祭」「心の垣根」…などの項目ごとに目からウロコの記述が満載!
もしかしたら私が生まれた頃の新潟・松之山ではまだこの文明が少し残っていたのかも…。そう思うと嬉しいし、切ない…。(T_T)
日本人必読の書。ぜったい読むべし!( ^)o(^ )