中内の晩年の一言『これまでの人生で楽しいことは何もありませんでした。』あれだけの業績を残したカリスマ経営者に対して、これは切なすぎる!(>_<)
読み進めるうちに、『40数年にわたる中内ダイエーの歴史は戦後日本の生きた歴史』だという意味が納得でき、上下巻合わせて1,000ページもあるのに、一気に読むことが出来た。
いくら食べても満腹感を覚えない餓鬼のような強欲さ。リクルート、ダイエーホークス、ヤオハン、など商売になりそうなものはどんなものにも手を出す。浜松町の通称軍艦ビルの14Fの執務室の隅には、サウナルームがあり、有名ホテルから失敬したバスタオルや石鹸が山のようになっている。それとは、裏腹に、情にもろくすぐ涙を流す人情派とシャイさを合わせもつ中内。筆者はカリスマ、多重人格者という。
その原点は、戦時中の飢餓体験=他人を決して人を信じては生きていけないというトラウマからのようだ。そう人を信じないからこそ、生きてこれたのだ!
・店長を猫の目のように変える。『一年以上同じ店に入れば悪いことをする』
・人の使い方は、馬と同じ。死ぬ気で走らせ、走らなくなったらポイと捨てる。誰も中内に直言出来なくなってしまった。
・ダイエー全幹部を集めて、黒板に、『イ』と大書して、『皆殺し作戦』と書いた。(『イ』=イトーヨーカ堂のこと)
その反面、
・阪神大震災の時には、物資を被災地に送るよう自ら陣頭指揮。フェリーやヘリを投入して食料品や生活用品を調達し、『どんな状況でも、明かりさえあれば人は希望を感じる』とローソンは壊滅状態でシャッターは閉めたままでも明かりだけは灯し続けた。
・新規採用者の人事ファイルの写真を見て、『僕はこの娘らとたぶん一生一度も会わへんやろ。だからせめて写真を見て、ここで会おうと思うとるんや』
時代に翻弄された戦後のカリスマ経営者の光と影を見た。
逆に、本書から21世紀のリーダー像をかいま見た気がする。