内田樹さんの著書を10冊くらい読んだけど、ホネがある。刺さるなあ。心地よいホネが。そして考えさせられるなあ。
「知識人というのは、孤独な人たちなんだね。(平川克美)「でもね、孤独な人たちの孤独な営為が、未来を切り拓くのだよ。(内田樹)」14歳から読みたい自由と勇気の人生案内」シリーズ、待望の最新刊。そのエッセンスを紹介しよう。
・(内田)いろんな記者が取材に来るんだけど、 このところ彼らのアプローチがなんだか定型的になってきているよ うな気がするんだよ。新聞記者が語る言葉もあまりに定型的で、 なんだか悲しい気持ちになった。「 自分が言わなくても誰かが良いそうなこと」 だけを選択的に語り続けるというのは、 語り手にとって非常に危険なことだと僕は思うんだ。「 自分が言わなくても誰かが言うはずのこと」なら、別にこの場で、 この相手に対して、情理を尽くして語る必要はない。 相手をここで説得しなければならないという切迫感もない。
・「自分が言わなくても誰かが代わって言ってくれそうなこと」 をしゃべるとき、人間はいくらでも手を抜く。必死になるのは「 自分がここで言わないと、誰も言ってくれないこと」 だけなんだよ。今ここで相手にちゃんと伝わって、 理解されなければ、そのアイディアはそれっきり、 この世界に根づくことができないと思うからこそ、 人は必死になる。「他の誰かが語ってくれそうなこと」なら、 そんな真剣に伝えようと努力する必要がない。 とりあえず言いたいことだけ言い放って、相手にそれが伝わるか、 理解されるか、そんなことはどうだっていいわけだよ。だから、 いきおい言葉が乱暴になり、論理が破綻し、 論拠も示されないようになる。それが「世論」 というものだと思うんだ。 他の誰かが自分に代わって同じことを言ってくれるはずの思念や感 情のことを「世論」という。そう僕は勝手に定義しているんだ。 だから、世論を語るとき、人の言葉は、粗雑になり、 攻撃的になり、感情的になる。
・オリジナルの意見は「そんな変な話聴いたことがない」 というもの。 それを読者や視聴者に飲み込んでもらうためには工夫が要る。 論理的に語り、論拠を示し、カラフルな比喩を使い、響きのいい、 わかりやすい言葉で語ることが必要になる。そうじゃないと、 誰も聴いてくれないから。世論を語るのは楽なんだよ。 そういう努力が一切要らないから。
・何かを語るというときに一番大事なのは、 自分が語る言明の保証人は自分しかいないと覚悟して、 その上で語る、ということなんだと思う。 自分の言明の保証人は自分ひとりでいい。 ひとりいれば十分なんだ。「私は自分の言葉に体を張ります」 という個人がいる限り、 その言葉はそれだけで十分に傾聴に値する。現に、 その場でふっと思いついた言葉でも、 どんな奇矯なアイディアでも、 つい耳を傾けてしまう言葉ってあるでしょう。それは、 その言葉を発した個人が体を張っている言葉なんだよ。
・「オレが黙ったら、同じことは誰も言ってくれない」 と思っている人間だけが、ぎりぎりのところで踏ん張れるんだ。 その人がいなければついに語れることがない言葉は重い。 言葉の重い軽いは、言明の真偽とはレベルが違うというのは、 そういうことなんだよ。
・(平川)先日、AV監督の村西とおるさんと話して、 これがとても面白かったんだ。 彼には得体の知れない迫力があった。 彼くらいキワキワなところを生きていると、 自分の意思にかかわらず、 自分の発言に署名しないわけにはいかないわけね。 出てくる言葉は、たしかに下世話なことばかりなんだけど、 自然と「この人はほんとうのことを言っているな」 と感じさせる力があった。その言葉は正しいか、 正しくないということではなくて、 自分の言葉に身体を張っていることだけはよくわかる。 その点だけ言えば、ヤクザと同じなんだ。本音を言うためには、 命を掛けなければならないわけでね。
・ある企業の社長と「 最近マネージメントとかモチベーションとか言うだろう?でもさ、 マネージメントってなんだからわかる?よくわからないよね」 という話をしたんだ。その社長は、「モチベーション」「」 マネージメントと「パフォーマンス」という言葉を使ったら罰金、 というルールで会議をすることにしたそうなんだ。 実際にやってみたら、全員、一言もしゃべんなかったそうだよ。( 笑)それで、僕がね、 その三つの言葉に変わる言葉を提案したんだ。それは「やりくり」 「折り合い」「摺り合わせ」の三つ。 この提案を聞いその社長は感激してね。「やりくり」「折り合い」 「摺り合わせ」と書いたバッジを作ったそうなんだ。さらに、 そのバッジを見たトヨタだの、いすゞだの役員連中も、 ものすごく感激したらしいんだよ。 この三つの言葉がわかってしまうのは、 働いている人たちが経験して、 自分の身体に染み込ませてきた言葉だからだ。僕の言いたい「 平場の常識」というのは「伝わる言葉」ということなんだ。
そーそー!その通り。フツーの同じじゃイヤだもんね。内田樹さんのキレのある言葉、いいなあ。オススメです。(^^)