「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「ジャジャ馬一代 遺稿・青田昇自伝」(青田昇)

青田昇といえば「ジャジャ馬」の相性で、第一期長嶋政権のヘッドコーチだったよね〜!♪ なんかよくわからん事件で解任されたけど、あの歯切れの良い解説は好きだったなあ〜!♪

 

「名選手にして名ヘッド・コーチ、名解説者―誰よりも野球を愛し、巨人を愛し、長嶋を愛した青田昇が最後の気力をふりしぼって綴った、渾身の一代記」。なかでも大下弘の記述がスゴイ。そのエッセンスを紹介しよう。
 
 

 

・僕はかねてから、次のような持論を抱いている。
日本プロ野球六十余年の歴史の中で、三つの重大な時期に、三人の天才が出現して、この国のプロ野球を救ったのだと。
 
一人は、プロ野球の創成期、昭和九年、まるで彗星のように現れて全日本軍に身を投じ、ルース、ゲーリック、フォックスの全米最強軍を相手どり、バッタバッタと三振の山を築いた、旧制京都商業中退、当時わずか十七歳の少年投手“スクールボーイ”沢村栄治
 
二人目は、戦後の一面焦土と化した日本に突如として出現し、ホームランをすコンスコンと打ちまくって、爆発的プロ野球ブームを巻き起こした、これまた無名白面の一青年、青バット”の大下弘
 
三人目は、日本が高度成長期に向かう昭和三十三年、千八百万円という史上空前の契約金で立大からプロ入りし、そのダイナミックな攻守走で、人々の記憶に永遠に残る仕事をした、ご存知“ミスタープロ野球長嶋茂雄
 
もし、この三人がそれぞれの時期に、現れて来なかったら、わがプロ野球は、いったいどうなっていたろうか。そう考えさせるほど、三人は運命的、象徴的な存在だった。
 
この三人の中でも、僕にとって一番痛切な存在は、プレーヤーとして時代を共にした大下弘である。大下を目標に僕は頑張った。大下のホームライに追いつき追い越すべく、滝川中学以来のライト打ちをを捨て去って、ホームラン打法に取り組んだ。ホームラン王五回というその後の僕が獲得したタイトルは、大下の存在がなければ、まずあり得ないことだった、と思う。
 
大下が爆発的なホームラン・ブームを巻き起こしたのは、翌二十一年、復活ペナントレースの第一年目である。大下はなんと年間20本という、それまでの日本記録を大幅に書き換えるホームランを叩き出した。戦前に記録は、昭和13年中島治康さんが作った年間11本である。一挙にこれを倍増したわけだ。
 

 
いまのファンは「なんだ、たった20本か」というかも知れないが、とんでもない話だ。戦争直後は、戦前に作られた古ボールの糸を巻き直したりして補修した“再生ボール”という粗悪極まるボールを使っていた。いくら打ってもさっぱり飛ばない、その上、後年ホームラン量産を狙って作られたラッキーゾーンも、その当時はなかったから、甲子園も西宮も広かった。この二十一年、僕のホームランはたったの3本、後年、物干し竿と呼ばれる長尺バットを振り回して46本も打った、藤村富美男が5本、巨人に復帰した川上さんが10本。そんな中での20本が、どんなに凄い記録であるか、とくと考えていただきたい。ゆうにいまの40本、50本に値するだろう。
 
この20本という数字に、日本中が瞠目した。それまで六大学一辺倒だった日本の野球ファンの目がいっせいにプロ野球の注がれるようになった。しかも、これが全く名を知られていなかった大下弘という一青年によって作られたところに不思議な神話性がつきまとった。
 

 
まことに“一人の英雄が時代をつくる”のである。20本という数字が、翌二十二年からの爆発的プロ野球ブームを作った。戦前の沢村さん同様、まるで、天がこの国にプロ野球を根付かせるために、この若者を遣わした。そんなふうにさえ思えてくるのだ。
 
大下を見るために、後楽園球場をファンが二巻して、その列が水道橋までつづくという、戦前では考えられない現象が現実に起こった。これも戦後、彗星のように現れた“ブギウギの女王”笠置シヅ子が“ホームラン・ブギ”を歌った。世はあげてホームラン。ホームランを打たないプロ野球選手など、プロの価値がないということになってきた。
 
川上、藤村、西沢、小鶴、青田といった戦前戦中からのプロの看板打者たちも、これを黙視するわけにはいかなくなった。大下一人に名を成さしめているわけにはいかぬ。そこから日本のバッティングというものの大革命が起こるのである。
 
すごいなあ。大下弘、観たかったな〜!これらの先人たちのおかげでいまのプロ野球があるんだよね。感謝だね。野球ファン必読っ!超オススメです。(・∀・)♪