「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「阿久悠と松本隆」(中川右介)

 


阿久悠と松本隆 (朝日新書)


この本はシビれる……70年代から80年代の、ワタシが最も音楽を聞きまくって、歌い、ギターを弾きまくった時代を過ごした人は夢中で読むだろう……。


沢田研二ピンク・レディー山口百恵松田聖子…歌謡曲が輝いていた時代の記録。日本の大衆がもっともゆたかだった昭和後期。阿久悠の「熱」と、松本隆の「風」がつくりだす“うた”の乱気流が、時代を席捲しつくした。なぜあんなにも、彼らの作品は、私たちをとらえてはなさなかったのか」そのエッセンスを紹介しよう。


・生涯に約5000曲の歌を書き、そのなかに日本レコード大賞受賞曲が5曲ある、阿久悠。これまでに2000曲以上の曲を書き、47曲がオリコンの週間チャートで1位となった、松本隆。この本は、二人が交差した瞬間を求め、その前後7年を描く「現代史」である。


阿久悠は70年代という「時代」をがっしりと握っていたーそんなイメージがある。だが、81年以降の阿久悠はヒット曲の数は減っていくし、それにともない作品量も減っていく。「時代」は彼の手からこぼれ落ちた。その1981年、レコード大賞受賞曲、寺尾聰ルビーの指環を作詞したのは松本隆だった。この年、近藤真彦スニーカーぶる〜す」「ブルージーンズメモリー松田聖子白いパラソル」「風立ちぬイモ欽トリオハイスクールララバイ松本隆で、1年52週の半分強の28週にわたり、松本隆作品が1位だった。かくしてー阿久悠から松本隆へと鮮やかな交代劇が演じられたのだ。


「歌謡曲黄金時代」二人の作詞家が何を書き、どう支持されたのか。いったいいつ、阿久悠の手から「時代」がこぼれ落ち、松本隆は大きな時代の変化をどう乗り切っていったのか。その歴史的瞬間を目撃していただきたい。


阿久悠トップランナーとして独走しているかに見えるときも、松本隆は次のステージを目指して壮大なビジョンを描き、彼のビジョンを具現化できるミュージシャンと歌手の登場を待った。その「とき」が到来したのが、1981年だったのである。


はっぴいえんど時代の松本隆がぶつかっていたのは「ロックを日本語で歌う」という問題だった。当時のロックは、日本人が日本人に向けて歌うものでも英語でなければならないのが「常識」で、それを否定し、日本語でもロックは可能だと主張し、実践したのがはっぴえんどだった。


・1974年アルフィー「夏しぐれ」オフコース「忘れ雪」は、レコード会社の要望で作られ、グループとしては気乗りのしないままレコーディングされ発売された不幸な曲だった。松本隆にとって、この2曲を作曲した筒美京平と出会えたのは幸運だった。いや松本隆だけではない。日本音楽界にとっても、これほど大きな出会いはないだろう。最強コンビが誕生したのだ。筒美京平松本隆との出会いで、ニューミュージック的なものを取り入れることができ、松本隆からみると、筒美京平との出会いで歌謡曲的なものの本質を会得していくことになる。この二人が次に取り組み、最初の大成功を勝ち得るのが、太田裕美だった。


木綿のハンカチーフは何もかも新鮮だった。8行ずつで4番まである長さ。一番ごとに前半が男性の立場から、後半が女性の立場からの詞。前代未聞にして空前絶後である。タイトルの木綿のハンカチーフ」は最後の最後になってようやく出てくる。これも異例だった。筒美京平の曲、太田裕美の声を得てから1年にして、松本隆の確信犯的な歌謡曲のパターンのぶっ壊しが本格的に始まっていた


・レコード会社専属の作詞家を旧世代とすれば、フリーランス阿久悠は新世代の作詞家の代表だったが、この時点では「プロの作詞家」であるというだけで旧世代になってしまったのだ。阿久悠より深刻なのが、彼の詞に曲を書いてきた作曲家たちだ。音楽のほうが変化は早い。若いシンガーソングライターたちは、作曲だけでなく編曲も演奏も、さらには録音も自分たちで手がけ、新しいサウンドを作っていく。その新しい時代の音楽に対応できる作曲家がどれだけいるか。


阿久悠の80年代の悲劇は、新しい世代の作曲家との人脈を持っていなかった点にある。彼の周囲にいたプロの作曲家で、80年代も継続的にヒット曲を生めるのは筒美京平だけとなる。松本隆は、阿久悠が持っていない人脈を持っていた。彼のおかげでニューミュージックのミュージシャンたちは、歌謡曲の世界へすんなりと入れたのだ。


ああ〜無性に太田裕美を聞きたくなった!歌謡曲ファン必読っ!オススメです。(・∀・)


 


阿久悠と松本隆 (朝日新書)