映画『フィールド・オブ・ドリームス』といえば、ケビン・コスナーがトウモロコシ畑で不思議な声を聞き、野球場を作るストーリーだったよね。この本は、それを思い出させる野球に関するエッセイ集!(・∀・)
「新宿二丁目に馳せた人生と野球への夢、酒と闘病、父との葛藤、妻への愛情。 近鉄ファンにしてアンチジャイアンツが語る、王、長嶋、原。『野球小僧』に7年間連載された永沢光雄の遺稿がついに書籍化。情感あふれる自伝的エッセイと野球小説に夫人と友人の対談、解説を付加」そのエッセンスを紹介しよう。
・先日テレビでプロ野球ニュースを見ていて、 素敵な光景に出くわした。 東京ドームでのファイターズ対ブルーウェーブ線。 ファイターズの攻撃の回、 ブルーウェーブの仰木監督が審判に抗議をした。 執拗なそれは長引き、ゲームは中断された。 するとライトの守備位置にいたイチローが。 外野席のグローブを左手にはめていた男の子とキャッチボールをし だしたのである。男の子、さぞ驚いたことだろう。一生、 あの日を忘れることはないだろう。イチローって、 素晴らしい大人だなあ。
・「僕(王貞治)は、 バッティングのスペシャリストとしての自負心はいつも持っていた し、技術に関しては長嶋さんより上だと思っていた。しかし、 僕に真似できないのは、プロ野球というものを長嶋さんが“ 見せる芸”として把えていた点だ。日本のプロ野球界の中では、 見せる意識を持ってプレーできた一流選手は、 後にも先にも長嶋さんをおいて他にはいないのではないか」(『 豪快野球で王道を往く』より)
・私は毎日毎日、王貞治を読んだ。読み続けた。 読み進めるうちに、 おぼろげながらなぜ王貞治に華がないのかがわかったような気がし た。 王貞治は戦後の行動経済成長をリアルタイムでホームランを打つこ とにより具現していたのだ、つまり、 一人でこつこつと高層ビルを建てていたのである。 それは私たちの父親の姿であり、家庭を顧みない男の姿だった。 そんな人間に子供たちは百歩ゆずって孫権はしても憧れることはな い、 大人の男たちも自分と同じ人間を見て魅力を感じるわけがない。 それに比べ、 長嶋茂雄はいつ自分の町にやってくるかわからぬサーカス団だった 。国家からも経済からも生活からも切り離された、 夢の中だけのサーカス団だった。だから、 子供たちは長嶋に華を与えた。 逆に女性には王貞治のファンが多い。私の母親もそうだった。
・「あのさあ」と私は成澤に言った。「実は俺、 キャッチボールをやりたいんだ」「……キャッチボール?……」 成澤が私の目を見た。「そう、キャッチボール」再び私は言った。
・私は右腕に異常を覚えた。 手首から肘にかけてどんより時には鋭い痛みが走り、 思うようにシャープペンをコントロールできないのである。 つまり、字がかけない。 整形外科医へ行った私は右腕のレントゲン写真を撮られた。 結果は「典型的な腱鞘炎です」困ったが、半面、 少しばかり誇らしいものも感じた。腱鞘炎なて、 憧れの野球選手のようではあるまいか。 アメリカのジョーブ博士の許へ行かねば!
・イチローの話をする。彼が幸せであったのは、 オリックスブルーウェーブというパ・ リーグの決して有名ではない球団に入団したことである。そして、 土井という監督に、 独特のバッティングフォームをまるで認められなかったことにある 。 チームも監督もイチローにとっては父たる存在ではあり得なかった 。日本のプロ野球の世界として、 彼を束縛するものは何もなかったのである。戦う相手は自分のみ。 彼がジャイアンツに入っていたら、 今の彼が私たちの前に存在していたかどうか、わからない。
ああ〜……キャッチボールしたい!その気持ち、よくわかるわー。野球ってやっぱりいいよね〜!ワタシも将来、野球に対する想いをエッセイにしたいなあ。オススメです!(・∀・)♪