「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「からす たろう」(やしま たろう)

この絵本は、心底感動した。読んでいる途中で不覚にも涙が溢れてきた……。(T_T)

きっと小学校ではこのような経験をしている子どもがたくさんいるんだろうなあ。淋しかったんだろうなあ…。こんな先生が、一人の子どもの人生を変えていくんだろうなあ。「学校の教室では無視されていた少年、からすたろうには、かくされた才能が。教育とは何かを問う」そのエッセンスを紹介しよう。

 

はじめて村の学校にあがったはじめての日、男の子がひとりいなくなっていた。
その子は教室の床下に隠れていた。
このおかしな男の子は、先生をこわがって、なにひとつ覚えることができせん。
クラスの子どもたちとも、ちっとも友達になりませんでした。
勉強の時間には、ひとり放っておかれ、休み時間にものけものに、いつもクラスのしっぽにぽつんとくっついていた。
「ちび」は、やびにらみの目つきをするようになった。そうすればみたくないものはみなくてもすむからです。
 
「ちび」は、たいくつしないで楽しむやり方をつぎつぎにみつけた。ただの天井を何時間眺めても飽きない、友達の肩のつぎはぎも研究する値打ちがあり、窓は一年中いろいろのものをみせてくれた。
「ちび」は、たいていの子がだいきらいな、ムカデやイモムシをつかまえて、じっとながめたりすることができた。
みな「ちび」のことを「うすのろ」とか「とんま」と呼んだ。
 
六年生になり、いそべ先生がうけもちになった。学校裏の丘の上によく連れて行った。「ちび」がぶどうや山芋のあるところよよく知っていた。花のこともよくしっているので、先生は感心した。先生は「ちび」の書いた白黒の絵が好きで、「ちび」しか読めないような習字でも、壁に張り出した。
 
ときどき、先生は、まわりに誰もいないとき、「ちび」とふたりだけで、話をすることがありました。
 
そして学芸会の舞台に「ちび」が現れた。「ありゃ、誰だい?」「あの阿呆が、なにをするのかい?」「からすの鳴き声の鳴き真似をするんだって?」
 
はじめに「ちび」は、かえったばかりの、あかちゃんガラスを真似た。つぎにかあさんガラス、とうさんがらすを真似た。朝早く、カラスはどんな泣き方をするのか、してみせてくれた。村の人に不幸があったとき、どんなになくかを、してみせてくれた。カラスがうれしくて、たのしいときには、どんなふうに、なくかをみせてくれた。
誰のこころも「ちび」が毎日、通ってくる遠い山の方につれてゆかれた。おしまいに、一本のふるい木にとまっているカラスを真似て特別の声を出した。「カアゥ!ワアッ!カアゥ!ワアッ!」誰も彼も「ちび」が住んでいる遠くて淋しいところをはっきりと想像することができた。
 
そこでいそべ先生が、ちびがなぜ、できるようになったかを説明した。
日の出とともに家を出て、日没、家に帰り着きながら、毎日、毎日、六年もの間……。ぼくたちみんなは、その長い間、「ちび」にどんなにつらくあたったかを思い出して泣いた。年とった人たちも「そうだ、そうだ、あの子はたいしたもんだ」といいながら、涙をふきました。
 
卒業の日、「ちび」は、たった一人「皆勤賞」をもらった。
 
卒業のあと、子どもたちは、ときどき、家の用足に町に出ていった。
「ちび」も、家族と一緒に焼いた炭を売りにときたま、町へやってきた。
しかし、もう誰も「ちび」なんて呼びませんでした。みんなからすたろう」と呼びました。
最後にうれしくて、たのしいカラスの鳴き声が。

 

いいなあ。心に響くなあ……(T_T) 実体験なのかな。超オススメです。(・∀・)