「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「タネも仕掛けもございません 昭和の奇術師たち」(藤山新太郎)

ワタシが生まれて初めて買った本、それは、初代引田天功『手品師入門』だった。当時、ガンガンテレビに出てたよね〜!大好きだったなあ!その天功の評伝が乗っているとうことで、この本は、10日間掛けてじっくり読みました。今年のベスト10入り違いなし!(・∀・)
 
 
昭和のテレビ全盛の時代、一世を風靡した、引田天功、アダチ龍光、伊藤一葉らにスポットを当てた奇術師列伝。奇術師の人生を全うすることは困難の連続であった。彼らはそれをどう生き抜いたのか?磨き抜かれた業への執念の原動力とは何だったのか?昭和の時代にタイムスリップして奇術師の人生をたどるなかで、かがやきに満ちた懐かしいあの時代の巧みな魔術の世界を楽しみたい」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・今回、引田天功、アダチ龍光、伊藤一葉、島田晴夫の4人にスポットを当てて昭和の奇術師についてお話ししようと思う。この4人は極めて個性的に昭和を生きていった奇術師ではあるが、全くお互いが無縁で生きていったわけではない。むしろ4人は互いに影響され合い、時として反発し合い、それが自らの演技に反映されて昭和の奇術が作られていった。
 
 
【地獄極楽の狭間を生きたイリュージョニスト引田天功
 
引田天功の人生は、スターとしての地位を維持するための代償であるかのように去勢を張って生きていかなければならなかった。次から次へと人のやらないような奇術を手掛け、そのために巨額な投資をした。しかし後から来る後輩は難なく自分のものしていった。奇術界のパイオニアと持ち上げられながら、心の中では我が身の不器用に悩みつつも、常に後輩の追撃に怯え、その追撃を振り払うために後輩の出現を阻んだ。人がうらやむほどの収入を得ながらも、見栄や先行投資にその数倍の借金をし、生涯借金に怯えていた。極端な浪費癖。止むことのなり女性遍歴。想像を絶するほどの虚言癖。信じられないほどの妄想癖。およそ通常の社会では通用しないタイプの人で、矛盾の固まりの人だった。まばゆいばかりの光の世界と、底の見えない泥沼の世界が常に背中合わせに存在する。しかも、どちらも天功自身が作り上げた結果なのである。
 

 

・天功の行動は一つ一つ丹念に見ていくと、決して方向は間違ってはいない。きっちり将来の可能性を見据えていて、どれも大成功する要素を持っている。当人の知名度と、はったりでスポンサーから資金を引き出す力も備えている。才能は尋常ではないのだ。しかしどれもうまくいかない。どうもスタッフを育てる地道な作業とか、一つ事を成功に結びつけるまでの根気が欠けていたように思う。
 
(伊藤一葉)「ハンカチを掛けておまじないをすると色が変わります。これが色変わりの花といいまして、まあ、これで終りです。次へ行きます」「(三本の長さの違うロープを出して)このロープを引っ張ってやりますと、長さが同じになります。これをもう一度引っ張ると元に戻ります。だからどうかといわれると、別にどうという物ではありません。これだけです「黄色い花が赤くなります。それだけのことですが、この件に関して何かご質問はございませんか?(間)なければ次へ参ります」
 

 

アダチ龍光の芸は、保守本道の芸とは違う。雑多なことをごちゃごちゃとやっていった結果に積み上がった芸で、形があってないような、千変万化、自由奔放な芸だった。ある意味で志ん生に通じるものがある。龍光は筋らしい筋を持たずに話をする。話は長くも短くも自在に調整がきいた。龍光の語りと話術は、その後のテレビ時代のトークマジックの基礎となった。テレビとおいう新しい媒体のなかで芸人はどういきなければならないかとはっきり答えを出して実践した人なのである。戦前のトークマジックと龍光のトークは大きく違う。龍光の芸はテレビのニーズに合致していたのである。そのためテレビの仕事は引っ張り凧だった。
 

(アダチ龍光)「どうしたらそんなに面白いことが話せるんですか?」「諦めることだ」
 
・「戦後の龍光は自分から何か掴もうとはしなかった。流れるままに、人の評価に見に任せたでのある。つまり諦めたのである。諦めたからこそ、その先に人気と地位が手に入ったのだ。となると龍光の芸は、気まぐれで、およそ後世に残る可能性のないものだったのだろうか。龍光を愛する者としては誠に残念だ。だが、私は最近、そうした龍光の生き方に「これもありかな」と思うようになった」
 
柳家金語楼の銘、小桜京子との出会い」「『ヨーロッパの夜』を観て、和製チャニング・ボロックを目指す」「日本第一号の鳩出しマジシャン誕生」「脱出王・ハリー・フーディーニ」「『奇跡の大脱出』と『催眠術』テレビスターとしての全盛時代」「大阪万博の出演料は二億円」「『何かご質問はございませんか』伊藤一葉」「当時の弁士は今のアナウンサー」「スライハンドで世界を征した男、島田晴夫」「しゃべりが絶品のダーク大和」など。

 

伊藤一葉、アダチ龍光も良かったよね〜!島田晴夫は知らなかったなあ!マジシャンの人生って波乱万丈だね。超オススメです。(・∀・)