「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「天才 勝新太郎」(春日太一)

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勝新太郎といえば、座頭市座頭市といえば勝新太郎だけどテレビも映画も一度も観たことがない。ピークを過ぎていたんだろうなあ。あの大麻パンツ事件」と撮影現場での「真剣死亡事故」が30年以上前だから遠い昔になったね。

 

さて、この本、そうかあ!勝新太郎は天才だったんだー!♪

座頭市」と豪快な勝新伝説で知られる勝新太郎。本書は映画製作者としての勝とその凄まじい現場をスタッフの証言を元に再現し、繊細すぎる実像を浮き彫りにする。純粋さが加速させる狂気のノンフィクション」そのエッセンスを紹介しよう。

 

・この時期の勝の現場に台本はない大まかな筋立てだけを用意して、あとは現場での即興の演出によって芝居は組み立てられていく。偶然生まれるものが完全なものだ」それが勝の思想だった。勝にとってはフィルムが原稿用紙なのだ。そのため、撮影後に物語の破綻がないように、スクリプター(記録係)が勝の演出を録音して物語の展開を記録していった。それを基にテレビ局に納入する「完成台本」が作られる。
 
自らのアイディアが跡形も残らないほど現場で変えられる勝との脚本作り。普通の脚本家なそれを怒りそうなものだが、中村努はそうした創作スタイルを歓迎していた。なにもないところから現場がスタートしますから、こちらも不安でしたよ。でも、勝の思いつきで、ピッタリと設定が決まることがあるんです。あの頃はまさに奇跡としか言いようがありませんでした」当時、勝は真田にこう言ったという。「神が天井から降りてくるんだよ」勝新太郎はまさにこの時、「神」に愛されていた。だが、それでも勝は満足しなかった。
 
「採算を考えるなら会社をやる意味がないんだよ!」それが社長・勝新太郎の口癖だった。もう妥協はしたくないスターとして金はいくらでも稼ぐことができる。ここは、金儲けの場ではない。自分の理想を実現するための場だ。そのためなら金は惜しくない。だが、どうすれば自分の理想とする映画作りができるのか、自分の納得する映画ができるのか。勝はその方法を何ら見いだせていなかった。
 
「千里の道を行き、万感の書を読む」ー我が意、得たり!勝は興奮する。「心ある。本当の道をめざす人間は、自分だけの道を歩かなければならない。あえて、今まで、誰もが歩かなかった道を歩かなければならない。千里の道をあるいていくなかで、心に芽生えた疑問、芽生えた愛、芽生えた醜さ、芽生えた尊さ、いとおしさ、いつくしみ、すべてを、自分だけにしか表現できないやり方で、表現しなくてはならない。それらを、心ゆくまで発酵させ、人々が長いこと見なれてきたものが、いかに退屈だったかを悟らせなければならない」
 
・テレビに移ってからの勝は座頭市物語の現場で、一切の妥協を許さずに理想を追い求めてきた。そのため、人の書いた脚本、人の演出に満足がいかなくなっていった。結局、自らが脚本を書き、演出をすることになった。むしろその方が、理想の純度を高めることができ、満足いく作品を作ることができた。それを繰り返すうちに、勝はすべてを自分でやらないと落ち着かなくなる。座頭市のことはオレにしかわからない。
 
「視聴者に言っておけ!オレの作品が始まったらテレビの前に正座して1カットもも逃さないようにとな!」
 
「オレには神が付いている。その神が降りてくれば、いつでも撮れるんだよ」
 
・勝は、自らの築き上げた「勝新太郎という理想像にがんじがらめになって、身動きがとれなくなっていた。勝新太郎は次も何かやる」「勝新太郎は必ず凄いことをやってのける」高すぎる理想へのプレッシャーを抱え、前に進むことをためらった。映画を作ることも、出ることも、勝は怖くなっていた。そして、勝は段々と映画の話をしなくなっていった。
 
「それならCMをカットしろ」「錚々たる役者たちが出演を希望」「目をつぶしてくれ!」「緒方が好きだから斬れない」など。 

 

じっくりと勝新太郎の演技を見たくなりました。オススメです。(・∀・)

 

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