毎日、お酒を飲んでいる。泥酔するというわけではないが、仕事とプライベートの切替という要素が大きいのかもしれない。19時過ぎるとビールが飲みたくなるって、これって「アル中」じゃないよね?「アル小」ぐらいだよね。(笑)
さてこの本。アル中っってこんなカンジなんだろうなあ…。
「薄紫の香腺液の結晶を、澄んだ水に落とす。甘酸っぱく、すがすがしい香りがひろがり、それを一口ふくむと、口の中で冷たい玉がはじけるような…。アルコールにとりつかれた男・小島容が往き来する、幻覚の世界と妙に覚めた日常そして周囲の個性的な人々を描いた傑作長篇小説。吉川英治文学新人賞受賞作」そのエッセンスを紹介しよう。
・アル中になるのは、酒を「道具」として考える人間だ。 おれもまさにそうだった。 この世から別の所へ運ばれていくためのツール、 薬理としてのアルコールを選んだ人間がアル中になる。 肉体と精神の鎮痛、酩酊を渇望する者、 そしてそれらの帰結として「死後の不感無覚」を夢見る者、 彼等がアル中になる。これはすべてのアディクト(中毒、依存症) に共通して言えることだ。
・体のふるえや悪寒は止んだものの、 底のないようなだるさが体の芯に残っっている。 気分は非常に重い。不安と憂鬱。長い期間、 四六時中酔っ払ってすごしていたために、 シラフでいることはおれにとっては異様な体験なのだ。 すがるもの、杖とするものがない不安。この不安な感じは、 極度の近視の人間がメガネを失くしてしまったときのあせりによく 似ている。メガネを探さねばならないのに、 メガネがないからうまく探せない。入り組んで出口のない不安だ。 アルコールが抜けたときのこの心もとなさは、 メガネを失くした不安を何十倍か強烈にした感じだ。
・「みじめな状態でいるよりは意識を失っていたほうがマシ」…… か。
・「死者は卑怯なのよ。 だからあたしは死んだ人をがっかりさせてやるの。 思い出したりしてあげない。心の中から追い出して、 きれいに忘れ去ってやるの」
・たいしたものを食っていないのに、体は懸命に肉芽組織を作り、 皮膚を張り、傷をなおしていく。自分の肉体がいじらしく、 また頼もしく感じられる。おれの肉体というマシンは、一途な、 気持ちのいい奴なのだ。
・酒をやめるためには、飲んで得られる報酬よりも、 もっと大きな何かを「飲まない」 ことによって与えられなければならない。それはたぶん、 生存への希望、他者への愛、幸福などだろうと思う。 飲むことと飲まないことは、抽象と具象との闘いになるのだ。
・「小島くん、人間の体といいうのはね、できることなら、 絶対に切らない方がいいんだ。うまくは言えないんだがね。 いっぺん体を切ってしまうと、目には見えないんだが、 そこから生気が抜けるというかね。 オーラが抜けてしまうというかね。 ずいぶん全体にガタがくるものなんだよ。とにかく、 なるべくなら、体に刃をいれるのはよした方がいい」
・飲む人間は、どっちかが欠けているんですよ。自分が、 自分が向かい合っている世界か。 そのどちらかか両方かに大きく欠落しているものがあるんだ。 それを埋めるパテを選び間違ったのがアル中なんですよ。
・「✕✕✕✕ですって?なんだ、そんなものが見たかったの、 小島さん。言ってくれたらいつでも見せてあげたのに」
・「きみがおれのアルコールだ。」
アルコールとは、上手にお付き合いしましょう!(笑)オススメです。(・∀・)