「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「父の詫び状」(向田邦子)

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ビックリした!向田邦子ってスゴいっ!ドラマはほとんど見たことがなく、何十年前にNHKで放送された「父の詫び状」の映像で感動したことは覚えているが、活字で読むとその感動が蘇るっ!昭和ってこういうオヤジがたくさんいたんだよね。
 
「宴会帰りの父の赤い顔、母に威張り散らす父の高声、朝の食卓で父が広げた新聞…だれの胸の中にもある父のいる懐かしい家庭の息遣いをユーモアを交じえて見事に描き出し、“真打ち"と絶賛されたエッセイの最高傑作。また、生活人の昭和史としても評価が高い。1981年航空機事故で急逝した後も根強い人気を誇り、太田光氏、星野源氏はじめ多くの新たな熱烈なファンを持つ著者の第一エッセイ集」そのエッセンスを紹介しよう。
 
「お父さん、お客さまは何人ですか」いきなり「馬鹿」とどなられた。
「お前は何のために靴をそろえているんだ。片足のお客さまがいると思っているのか」
靴を数えれば客の人数は判るではないか。当たり前のことを聞くなというのである。あ、なるほどと思った。
 
・目黒高女の編入試験の夢をみて、父が脂汗をかきひどくうなされていた。試験日が盲腸手術の直後とぶつかってしまい体操を免除していただくようにお願いしたが、免除にならず、走ってみなさいといわれている。父は飛び出して、この子は病み上がりだから、代わりに走らせてもらいたい」と願い出て、女学生の中にただ一人まじって、スタートラインに立ったという。ピストルが鳴って走り出したのだが、足に根が生えたのかどう焦っても足が前に進まない。七転八倒しているところを母に起こされたというのである。夢の中で駆け出さなくていいから、その分鉄拳や口言を減らして欲しいと思ったが、口に出していえば、それこそ鉄拳が飛んでくる。
 
・自分が不得手だったせいか、女の子が自転車に乗ることをひどく嫌った。あれは女が乗るものじゃない。どうしても乗りたいのなら自動車か馬に乗れ。自転車に乗っているのを見つけたら、その場で引きずりおろすからそう思いなさい」というのを真に受けて、いまだに自転車は駄目である。
 
思い出というのはねずみ花火のようなもので、いったん火をつけると、不意に足許で小さく火を吹き上げ、思いもかけないところへ飛んでいって爆(は)ぜ、人をびっくりさせる。何十年も忘れていたことをどうして今この瞬間に思い出したのか、そのことに驚きながら、顔を名前も忘れてしまった昔の死者たちの束の間の対面をする。これが私のお盆であり、送り火迎え火なのである。
 
向田邦子は突然あらわれてほとんど名人である」山本夏彦
 
特に、「父の詫び状」「身体髪膚」「隣の神さま(喪服の話)」「お辞儀(留守番電話の話し)」「子供たちの夜」「ごはん(東京大空襲の話)」「お軽勘平」「あだ桜」「車中の皆様」「ねずみ花火」「チーコとグランデ」「海苔巻の端っこ」「学生アイス」「魚の目は泪」「隣の匂い」「お八つの時間」「わが拾遺集」「昔カレー」「薩摩揚」など。

 

昭和という時代のテイストが感じられる風景と情景。ああー、いい!懐かしい!向田邦子に惚れそうだ!今年は全作品を読みます!超オススメです。(・∀・)

 

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