またまた向田邦子さん関連本。しかし全作品読破を目指しているけど、なかなか終わらないなあ!(笑)これだけ研究の対象になるのが、スゴいことだよね〜!♪(・∀・)
・向田邦子を書くには「記憶と記憶力」 のことから始めなければならないだろう。何といっても、 彼女の最大の天からの授かりものは「記憶」だった。〈 向田邦子は突然あらわれてほとんど名人である〉(山本夏彦) という文章力も〈生活人の昭和史〉(谷沢永一) と称されたその内容も、あの「記憶力」があればこそだった。
・向田邦子の成功は、 この記憶の性質をそのまま作品の構造に転用して、 まとまった長いエッセイを書いたことだった。『父の詫び状』 の諸作品は、だいだいがこの〈記憶の連鎖〉 の構造になっているが、なかでももっとも成功したのは「 ねずみ花火」だろう。。ここでは〈人の死〉 に関する思い出が次々わき起こってきて、 それがそのまま作品の卓抜な構成になっている。
・向田邦子の記憶再生の火打ち石(フリント)は〈食べ物〉 あるいは〈食べること〉だった。味覚ばかりではない。 御飯やみそ汁からの立ち上る湯気も、カレーの匂いも、 皿小鉢の模様も、すべてが記憶のフリントとなった。
・父・敏雄の気の遣い方というか、親切のかけ方は、 向田邦子のそれと酷使している。いかにも、 そんなことをするのは照れ臭くってといいたげに、遠廻しで、 いくつかのクッションや細工があって、うっかりすると見逃して、 とでやっとそれとわかるようなものだった。ああ、 これは遺伝だったのかー。
・「小説」の中で、どれほどの〈真実〉 をいってしまうかは後にして、「エッセイ」 の中で作家はどのくらい〈嘘〉をつくのだろう。脚色・ 潤色といってもいい、文飾といってもいい。どれくらい〈 真実でないこと〉を書くのだろう。向田邦子はどうだったのか。
なるほど。確かに。著者の鴨下さんこそが、探偵だね。この推理は正しい、おそらく。向田邦子ファン、必読。オススメです。(・∀・)