「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「向田邦子 ベスト・エッセイ」(向田邦子)

ときどき読み返したくなるんだよね〜向田邦子さんの文章を。いまでも新刊本が出るのがスゴいよね〜!ミュージシャンでいうとベストアルバムだよね〜!♪
 
 
お人好しと意地悪、頑固と機転……人間の面白さを描いた名エッセイ!家族、食、旅、仕事、こだわりの品など、テーマ別に末妹が50篇を精選。幼いころから磨かれた観察眼と黙っちゃいられない正義感。向田邦子の手にかかれば、ごく平凡に見える日常が鮮やかな色彩を帯びて動き出す。考え抜かれた言葉選びと胸がすくどんでん返しは、まさにエッセイのお手本。「姉のところには何故か面白いことが押し寄せてくる」と語る末妹が選んだ、家族、食、私、仕事のことから処世術まで。ちくま文庫オリジナル・アンソロジー」そのエッセンスを紹介しよう。
 
 
【ごはん】
 
・肺病というものがどんな病気かおぼろげに見当はついていた。今は治っても、年頃になったら発病して、やせ細り血を吐いて死ぬのだ、という思いがあった。少し美人になったような気もした鰻はおいしいが肺病は甘くもの悲しい。
 
釣針の「カエリ」のように、楽しいだけではなく、甘い中に苦味があり、しょっぱい涙の味がして、もうひとつ生き死にかかわりのあったこのふたつの「ごはん」が、どうしても思い出にひっかかってくるのである。
 
女は、毎日小さく博打している。早いはなしが、毎日の買物である。鯵にしようか鰯にしようか。鳥にしようか豚にしようか。うちでメシを食うぞ、と亭主は出かけていったが、どうも帰りは遅いような気がする。こういうとき、張り切ってお刺身など買うと勿体ないから、おでんで安く上げておこう。
 
・夕方になって雨が降り出すと、傘を持って駅まで父を迎えにゆかされた今と違って駅前タクシーなどない時代で、改札口には、傘を抱えた奥さんや子供が、帰ってくる人を待って立っていた。父に傘を渡し、うしろからくっついて帰ってくる。父は、受け取るとき、「お」というだけである。ご苦労さんも、なにもなかった。帰り道も世間ばなしひとつするでなく、さっさと足早に歩いていた。
 
倉本聰氏のCMには、「こだわる。怒る。感動する」というキャッチフレーズがついている。私の場合は、「こだわる、驚く、あわてる」であった。
 
記憶や思い出というのは、一人称である。単眼である。
 
うちの電話はベルを鳴らす前に肩で息をする。
 
・小学生のとき、わたしは机という字と枕という字をよく間違えたが、私にとって机は本当に枕なのである。
 
東京美術倶楽部の歳末売立ては「買ってくるぞと勇ましく」という軍歌を耳をふさぎながら、「絶対に買わないぞ」と誓って家を出るのである。
 
面倒な病気を背負い、自分のからだにきずができてから、私はきずのあるものが捨てられなくなっているテレビドラマのなかで人が殺せなくなったように、気持のどこかで小さく縁起をかついでいるのかもしれない。
 
 
「ごはん」「白か黒か」「麗子の足」「丁半」「知った顔」「娘の詫び状」「お辞儀」「父の風船」「お八つの時間」「薩摩揚」「幻のソース」「水羊羹」「お弁当」「たっぷり派」「「う」」「「食わらんか」」「犬の銀行」「噛み癖」「猫自慢」「新宿のライオン」「眠る机」「眼があう」「負けいくさ 東京美術倶楽部の歳末売立て」「きず」「旅枕」「鹿児島感傷旅行」「テレビドラマの茶の間」「「ままや」繁昌記」「お軽勘平」「天の網」「ポロリ」「正式魔」「電気どじょう」「ヒコーキ」「黄色い服」「手袋をさがす」など。

 

いいねえ。何度読んでも響くねえ。名文だねえ。向田邦子関連全作品、読破は続く。オススメです。(・∀・)