ときどき読み返したくなるんだよね〜向田邦子さんの文章を。いまでも新刊本が出るのがスゴいよね〜!ミュージシャンでいうとベストアルバムだよね〜!♪
「お人好しと意地悪、頑固と機転……人間の面白さを描いた名エッセイ!家族、食、旅、仕事、こだわりの品など、テーマ別に末妹が50篇を精選。幼いころから磨かれた観察眼と黙っちゃいられない正義感。向田邦子の手にかかれば、ごく平凡に見える日常が鮮やかな色彩を帯びて動き出す。考え抜かれた言葉選びと胸がすくどんでん返しは、まさにエッセイのお手本。「姉のところには何故か面白いことが押し寄せてくる」と語る末妹が選んだ、家族、食、私、仕事のことから処世術まで。ちくま文庫オリジナル・アンソロジー」そのエッセンスを紹介しよう。
【ごはん】
・肺病というものがどんな病気かおぼろげに見当はついていた。 今は治っても、年頃になったら発病して、 やせ細り血を吐いて死ぬのだ、という思いがあった。 少し美人になったような気もした。 鰻はおいしいが肺病は甘くもの悲しい。
・釣針の「カエリ」のように、楽しいだけではなく、 甘い中に苦味があり、しょっぱい涙の味がして、 もうひとつ生き死にかかわりのあったこのふたつの「ごはん」が、 どうしても思い出にひっかかってくるのである。
・女は、毎日小さく博打している。早いはなしが、 毎日の買物である。鯵にしようか鰯にしようか。 鳥にしようか豚にしようか。うちでメシを食うぞ、 と亭主は出かけていったが、どうも帰りは遅いような気がする。 こういうとき、張り切ってお刺身など買うと勿体ないから、 おでんで安く上げておこう。
・夕方になって雨が降り出すと、 傘を持って駅まで父を迎えにゆかされた。 今と違って駅前タクシーなどない時代で、改札口には、 傘を抱えた奥さんや子供が、帰ってくる人を待って立っていた。 父に傘を渡し、うしろからくっついて帰ってくる。父は、 受け取るとき、「お」というだけである。ご苦労さんも、 なにもなかった。帰り道も世間ばなしひとつするでなく、 さっさと足早に歩いていた。
・記憶や思い出というのは、一人称である。単眼である。
・うちの電話はベルを鳴らす前に肩で息をする。
・小学生のとき、 わたしは机という字と枕という字をよく間違えたが、 私にとって机は本当に枕なのである。
・面倒な病気を背負い、自分のからだにきずができてから、 私はきずのあるものが捨てられなくなっている。 テレビドラマのなかで人が殺せなくなったように、 気持のどこかで小さく縁起をかついでいるのかもしれない。
いいねえ。何度読んでも響くねえ。名文だねえ。向田邦子関連全作品、読破は続く。オススメです。(・∀・)