「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「名文どろぼう」(竹内政明)

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名文どろぼう (文春新書)

名文どろぼう (文春新書)

 

 言葉によって勇気づけられ、言葉によって落ち込んだりするよね。どうせなら、勇気づけられたいよね。(・∀・)

さてこの本。名文のコレクションという贅沢な一冊!「人の心を打つ名文を書くには、名文を盗むことから始めよう。当代随一の名文家が、小林秀雄からスティーヴン・キング、落語、六法全書まで、秘密のネタ帳から古今東西の「名文」を絶妙に引用して綴る人生の四季。名文の芳香に浸る至福のひととき」その代表的な名文を紹介しよう。

 

いい人と歩けば祭り
   悪い人と歩けば修行   (小林ハル


・上司から「働くとはハタ(周囲)を楽にさせることなんだぞ」と陳腐な言い回しで説教されたといき、ただうつむくものいいけれど、

それなら「じだらく」(自堕落)の方が、自他ともに楽になるから、一層良いのではないか。(田中美知太郎)


【あい】(愛)に始って【をんな】(女)に終わるもの、それは戦前の辞書。【あい】(あい)に始まって【わんりょく】(腕力)に終わるもの、それは戦後の辞書である。(高見順 見坊豪紀


・「痛い」
すきになる    ということは
こころを   ちぎってあげるのか
だから   こんなに痛いのか   (工藤直子

 

ネクタイを 上手に締める 猿を飼う(森中恵美子)


・金メダルを2つも手にしながら「人生最高の喜びではない」そう語った人がいる、北京パラリンピック男子400メートル、800メートル(車いす)の伊藤智也選手である。

生きてきた人生のなかで五番目にうれしい。子供が四人いるので。(伊藤智也)

 

銭形平次と女房お静はフランス語が話せた。出かける平次親分を、お静が送る。おまえさん、大切な商売道具は持ったでしょうね。

「ジュテモタ?」
「マダモトラン」(三遊亭歌之介)


・甥御さんが中学生の頃、学校で習う以上の学力をつけてやりたい「伯母ごころ」から壇ふみさんが英語の家庭教師を買って出た。

ある晩、レッスンの途中、おふみ先生が例題の一語について解答を求めた。
「エレガントは何の意味?」「ええと、ええと、ええと」甥は答えられない。おふみはちょっと気取ってみせる。
「じゃあね、伯母さんのことを考えてごらん。伯母さんの姿を、人が日本語で上手に言い表すとしたら、どんな言葉を使うでしょう?」
「分かった」中学生が叫んだ。「象だ」阿川弘之


・息子(小三)の持ち帰った書き取りのテストに「女心と心配」と書いて、×がついていた。息子「女という字にウかんむり忘れたの」

 

・学生「どうすれば金もうけができますか?」
猿の毛を抜け!和田垣謙三
MONKEYの「K」を抜けばMONEYになる、と。気の利いた洒落で学生を煙に巻いた。


僕が母のことを考えている時間よりも
母が僕のことを考えている時間の方がきっと長いと思う。

(NTT「秀作ネーミング事典」)

 

誰でも、生まれた時から五つの年齢までの、あの可愛らしさで、たっぷり一生分の親孝行はすんでいるのさ、五つまでの可愛さでな。(岩崎老人「塀の中の懲りない面々」(安部譲二))

 

・ナイジェリアのゴウォン将軍が国賓として英国を訪問したときのことである。ロンドンのヴィクトリア駅まで、エリザベス女王が馬車で出迎えた。ふたりが馬車に乗っていると、一頭の馬が尻尾を上げて、おならをした。女王はゴウォン将軍のほうを向いて言った。「まあ、申しわけありません。いらして早々、こんな失礼を」「いや、どうぞ、お気になさらないえください」ゴウォン将軍は言った。「わたしはてっきり馬がしたのだと思っていましたから」

 

・数学者ガウスは1807年、ある問題に熱中していた。医者がそばへ来て、二階で奥さんが危篤だと知らせた。すると、目をそらさず、つぶやいて「待つように言ってくれ、もう少しで解答ができる」

 

・心理学者フロイトは、列車の時刻表の見方がわからなかった。旅行には、だれかとでないと出かけられなかった。

 

「天才とは、蝶を追っていつのまにか山頂に登っている少年である」ジョン・スタインベック

 

気象庁ソフトボール大会が雨で延期されたそうでございます。(桂枝雀

 

蝙蝠傘は、世界で一番小さな、二人だけの屋根である。寺山修司

 

・「かさ」(お店やさんごっこをしていて)これ(かさ)はあめのおとがよくきこえる きかいです  大阪日向子 宮城・五歳

 

・「マグダラのマリア」とあるのを、ついうっかり「マタグラのマリア」と読んでお目玉を喰った。(和田信賢「放送ばなし」)

 

・最新型の体重計が発売された。声でいろいろなアドバイスをしてくれる。例えば、「体重が徐々に増えています。お気をつけください」というように。ある婦人がさっそく買い求め、ドキドキしながら体重計に乗った。体重計が告げた。「一人ずつ乗ってください」

 

世の中に澄むと濁るで大違い

刷毛(はけ)に毛があり 禿(はげ)に毛がなし

服に徳あり 河豚(ふぐ)に毒あり

人は茶を飲み 蛇(じゃ)は人を飲む

キスは甘いし 傷は痛いし

旗はヒラヒラ 肌はチラチラ

ためになる人 だめになる人

菓子は食いたし 餓死は食えない


「あのね、蛇が脱皮するの、どうしてだか知ってます?一生懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、いつかは足が生えてくるって信じているからなんですってさ。今度こそ、ってね」宮部みゆき火車」)

・「酒がある。一杯のめ」

「イヤ、願があって、三年禁酒した」

「お前のような酒のみが、ほんとうか」

「きっぱりと酒は断った」

あくる晩、みんなで飲んでいるところへ、酒を飲みにきた。

「それ見ろ、昨日禁酒だといったくせに、もう破るのか」

「破りはしない。三年の禁酒を六年にして、夜だけ飲むのだ」

「なるほど、そんなら、いっそ十二年にして、夜昼のめ」


親が酒を飲めば、孝行息子や孝行娘が育つ。養老の滝でも何でも、昔から孝行な人物の親は、大概酒を飲みますものです。(泉鏡花


「人生仮免許」

二十歳の諸君!今日から酒が飲めるようになったと思ったら大間違いだ。諸君は、今日から酒を飲むことについて勉強する資格を得ただけなのだ。仮免許なのだ。かく言う私自身でありが、実はいまだに、仮免許がとれないのだ。諸君!この人生、大変なんだ。(山口瞳

 

ロナルド・レーガンが大統領に就任して二ヶ月後、講演を終えてワシントンのホテルから出たところをピストルで撃たれた。搬送された病院で胸から弾丸を摘出する手術を受けるとき、執刀医にウィンクをして語った言葉。「君が共和党の支持者であるのを祈るよ」ロナルド・レーガン


・ホンダの本田宗一郎の遺言。社葬はするな。社葬なんかすれば、交通渋滞になり、世間に迷惑がかかる。そんなことはクルマ屋として、絶対にやってはならない。本田宗一郎


・阪急グループ総帥、宝塚歌劇団創立者小林一三。昭和初年は、不況で、阪急百貨店の食堂はライスだけを注文する客で混み合った。ライスに卓上のソースをかけて食う。ある日、食堂に「ライスだけの客お断り」の貼り紙が掲げられた。それを見た小林は、ただちに書き直させたという。「ライスだけの客、歓迎」

 

・講談の邑井貞吉は、豊臣秀吉細川幽斎から和歌の道を教えられるという物語を講じて、「その時太閤殿下か詠み給うとお歌が……」と、そこまで言ってハタとその歌を忘れてしまった。お歌がお歌がと繰り返しながら思い出そうとしても出て来なかった。「おい、だれか楽屋に知ってる者はいないかい?……」声をかけたが返事がなかった。するとこんどは客席に向かって、「どなたかお客さまでご存知の方はいらっしゃいませんか?」客席はどっと沸いたが、あいにく歌の文句まで貞吉に教えられる客はいなかった。そこで貞吉やおら張り線をポンと叩いて、「なに知らなきゃ知らないでよござんす。大した歌じゃありませんー」大西信行「落語無頼語録」)


武者小路実篤は、70年間にわたって、毎日のように書を書き絵を描いたが、ついに書も絵も上達することはなかった。しかし、私にとって「勉強すれば偉くなる」とか「勉強すれば上達するということよりも「いくら勉強しても上手にならない人もいる」ということのほうが、遥かに勇気をあたえてくれる」山口瞳

 

東大出には、『赤門』と『バカモン』がある。山藤章二

 

・国文学者の池田彌三郎さんが婦人と福島県のひなびた温泉に旅したときのこと。夕方、宿の下駄をつっかけ、散歩にっ出ようとした。すると、宿屋の番頭が玄関のところにいて「じいさん、ばあさん、お出かけ」と大声で怒鳴ったという。一周りして帰ってきたところが、再びその番頭が「じいさん、ばあさん、お帰り」と言った。池田氏はつかつかとその番頭の前へ行き、「きみ、いくら何でもぼくたちをじいさん、ばあさん呼ばわりすることはないだろう。少しは違った言い方があるんじゃないか」と抗議した。すると今度は番頭の方が面食らった表情で、そんなことを言った覚えはないという。一体どういうことかと思ってよく聞いてみると、池田氏の泊まった部屋の番号が十三番だった。「ずうさんばんさんお出かけ」と言ったのである。(金田一春彦「日本語を反省してみませんか」)


・「カレイ」

九州の飲み屋でのこと となりの若者が 箸を上手に使って 焼ガレイを見事に食べていた そのまま標本に出来るほと きみ きれいに食べるね と声を掛ければ カレ こちらも見ずに はいネコが月謝払って 魚の食べ方ば習いに来よります (川崎洋「交わす言の葉」)

 

月亭可朝さんは野球賭博の容疑で警察のやっかいになったことがある。可朝は取調官に「お上のやってる競馬や競輪はよくて、野球賭博はどうしていけないのか」と聞いた。取調官は野球賭博暴力団の資金源になるからいけないのだ」と答えた。ここで可朝は伝説に残る名文句を吐いた。「そら、負けて賭金(かね)を取られた場合でっしゃろ。わしは勝っとるから暴力団から吸い上げとる。表彰してほしいくらいのもんや」吉川潮「完本・突飛な芸人伝」)

 

セミナーのネタ集としても使えるね。超オススメですー!(・∀・)

 

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名文どろぼう (文春新書)

名文どろぼう (文春新書)