「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「鯛ヤキの丸かじり 7」(東海林さだお)

 


鯛ヤキの丸かじり (文春文庫)


全作品読破を目指している東海林さだお氏の本。何度も言うが天才である。ひとつのテーマでこれだけの文章を書ける人はいない。着眼点、観察眼、そして表現力。ココロの疲れには、ときどき読むことが必要だよね。(・∀・)シリーズ第7段。そのエッセンスを紹介しよう。


さくらんぼを20秒ほどみつめてください。あなたは、自分の心が洗われているのを感じるはずだ。赤く、丸く、愛くるしく、清楚、そして可憐。この世のけがれを知らぬげな、鮮紅色の無垢の魂。丸くて可憐で赤い果実に、突き刺さるような薄緑色の細くて長い柄。完結したデザイン。実在するメルヘン。エンゼルの玩具。気品にあふれ、優しさに満ち、そのたたずまいは宗教的ですらある。厳かに「アベ・マリア」を歌い出す人もいるにちがいない。「わたしは汚れている」と絶叫して号泣する人も出てくるにちがいない。さくらんぼは人の心を打つ。無垢の輝きに人は心を打たれる


あの、っこで急に引き合いに出しては気の毒な気がするのだが、キウイという果物がありますね。なんだかネズミがうずくまっているような果物。あれと比べてみると、さくらんぼの清楚、可憐がいっそう際立つ。キウイを前にして、人は祈りを捧げないし、「アベ・マリア」も絶叫しない。こんなところで、急に引き合いに出されたキウイには、本当に気の毒だと思うが……。


ラーメンライスの主食はあくまでライスであって、ラーメンはあくまで副食という立場にある。だが、どう見ても、主役のライスより副食の図体があまりにでかい。主従の関係が明らかに逆転している。ラーメンはいつも主役として誕生し、主役としてその生涯を全うしてきた。ところがカウンターに着任してみると、あたりの様子がヘンだ。かたらわにライスがいる。


「バナナは気配りのプロだ」という噂を聞いてから久しい。リンゴのように刃物が要らない。刃物を用意させてはわるい、というバナナの気配りなのだ。独特のカーブは、あれも気配りなのだ。口のほうからバナナのほうに向かわなくても、バナナのほうがカーブして口のところに来てくれるのだ。なんという気配り。何という奉仕。何の抵抗もなく歯はバナナにくいこみ、リンゴのように芯の問題を顧慮することなくいともたやすく噛み切られる。「あんまり歯に力を入れていただくて結構です」と、バナナが案じてくれているのだ。


その他、「都庁近辺昼めし戦争」「トーストの幸せ」「あれが嫌い、これが嫌い」「豚汁の怨念」「タコのシャブシャブ」「ニッポンの朝食」「カレーパンの空洞」「桃汁娘」「現代の狩り」「ビンの牛乳」「「すなっくらんど」は宝の山」「おでん屋襲撃」「お茶漬けのため息」「生ビールへの道」など。


…酒飲みには「生ビールへの道」は同感、同感!オススメです。(・∀・)


 


鯛ヤキの丸かじり (文春文庫)