「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「志ん生、語る。家族、弟子、咄家たちが語る内緒の素顔」(岡本和明)

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志ん生、語る。―家族、弟子、咄家たちが語る内緒の素顔

志ん生、語る。―家族、弟子、咄家たちが語る内緒の素顔

 

 ワタシの大好きな落語家の一人、古今亭志ん生師匠。「火焔太鼓」は何度聞いたかわからない。何度聞いても笑ってしまう。

さて、この本。「昭和の名人・古今亭志ん生にまつわる、とっておきの話を、歴代の名人、家族、弟子、評論家たちが語り尽くす1冊。付録には、「幻の音源」とされる志ん生の演目の中でも、さらに貴重な初音源、小咄「小僧とぼた餅」「庭蟹」のほか、こちらも珍しい音源による「お直し」「疝気の虫」(計64分)を収録したCD付き」これは貴重だ。そのエッセンスを紹介しよう。

 
・(美濃部美津子)「父は普段はほとんどしゃべらないのよ」って言っても信じてくれる人はほとんどいないわね。家の中でも面白いことを言ったりするんじゃないかと思ってるみたいだけれども、家ではほとんど話をしなかったわね。無口で照れ性」これは美濃部家の男たちの持って生まれた生活。死んだ馬生もそうだったし、志ん朝もそうですね。だから、初めて会う人は話すのに苦労するんじゃないかしら。この性格はまさに父譲り。でも、父が一番じゃなかったかしら。落語をとったら何もない人でしたから、高座以外では存在感があまりない人でしたね。
 
母に一度「よく父さんと別れようと思わなかったわね」って聞いたことがあるの。そうしたら「遊んでばかりいたけれど、父さんは噺を捨てなかったからね。他のことはいい加減だったけれど、落語の本は決して手放さなかったかし、稽古だけは一生懸命やってたの。だから、この人はこんなにやってるんだから、そのうちにものになるんじゃないかって思って…」って言ってたけど、私はとても母のようにはできないと思う。
 
好きな噺だけあってきた古今亭志ん生という咄家が私の父ですが私の中ではやはり、美濃部孝蔵という一人の人間でしかないんです。世間から名人といわれ、その自由奔放な生き方がいろいろ言われてますけど、私たちの前では平凡な一人の父親でしたね。ただ、あんなに幸福な生き方でのできる人はそんなにいないんじゃないかしら。好きな噺をお酒で一生を送ることができたんですから。
 
・(古今亭志ん朝私はやっぱりオヤジに対しては批判的なところがずいぶんありますから。それはどういうことかというと、これは自分の弟子にも言うんですけど「とにかく、師匠の何から何まで全部を肯定しては駄目だ。だからといって師匠を批判するんじゃあない。実際に批判するんじゃないんだけども、師匠がこれは右だ。これは黒だ、これは青だと言ったのを、そのまま「はい」と言って、自分が思い込むようじゃ駄目だ。師匠が白だと言ってるけど、ひょっとしたら黒じゃないかな?自分には黒に見えるんだけどって気持ちを持たなきゃ駄目だと言ってる。そういう意味の批判ですね。志ん生志ん生でそれでいいんですよ。でも、今度それをお手本にして自分が演る時に、そのまんま演ったんでは駄目だって、そういう批判の目を持たないと駄目だと。これはあくまで私の考えですがね。
 
オヤジの芸についてたびたび聞かれるんですがね、今でもオヤジのテープを聞いたりしますが、我々が絶対真似ができないのは、「本人を出しているところ」ですね。結局、大衆芸能というのは、踊りでも歌でも、その人物の魅力を楽しむものだと思うんです。もう志ん生が間違えようが何しようが、いい加減なことを言っても、ようは志ん生でなきゃ駄目なんですから。志ん生の場合、噺が上手いとか下手じゃあないんですね、お客は。そういう意味で黙ってすむ人、出てきただけでおかしい人、座っているだけで魅力のある人ってのは、あたりをずーっと見渡すと、私の知っている咄家では、志ん生一人です。これはやっぱり他の人ではできないんですから。他の人は芸をやらなきゃ駄目なんです、芸をやらなきゃ
 
・(古今亭志ん馬オヤジは全て落語って人でしたでしょ。世事には疎いし、偉い人にペコペコするわけじゃない。“俺は志ん生だ” “俺は勝手にやってるんだ”っってところがありました。だから、客が気に入らなきゃ噺を投げるしね。その代わり気に入るとすごかった。夫婦仲はよかった。ものすごくよかったけど、喧嘩もよくしてた。何言ってやんでえ、このクソババア」「クソしないババアがいるかい」なんて、言ったりして、不思議な喧嘩でね。わきで聞いてて面白かったですよ。
 
・(古今亭志ん駒師匠の前で「風呂」って言うと、怒られましたよ。「江戸っ子は風呂じゃねえ、湯だっ」てね今でも師匠をお湯……「世界湯」っていうんですがね、そこへ連れてったことなんか話すんです。うちに湯があったんですが、師匠はよく「おい、湯へ行こうっ」って言って、弟子たちと湯に行くんです。急にバチャバチャって音がしんでそっちを見ると師匠がおぼれてる。あわてて助けたら、師匠も恥ずかしかったんでしょうね、泳ぎの練習をしてたんだ」って、言ってましたけどね。
 
僕は落語が好きというよりも、志ん生が好きでこの世界に入った人間だけど、やっぱり自分の才能のなさがわかるね。どうやってもかなわねえや。聞くだけで、しゃべるなんておこがましいね。
 
・(古今亭志ん五「ウンコがこわくて、いい百姓になれるか」って怒られたことがあるんです。その時私は、百姓になるために弟子入りしたんじゃありませんから」と答えたんです。
 
・(古今亭志ん橋)「馬鹿っ、お前はただ『えー』って言ってるから駄目なんだ。〈これからこいつは何をしゃべるのかな?〉ってのがねえじゃねえか。お前はただ『えー』って言ってるだけじゃねえか」大師匠の言葉の意味がすぐには理解できなくて、二、三日たってやっと少しわかりました。

 

いいなあ……志ん生。音源だけでおかしい…まさに名人だね。オススメです!♪

 

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志ん生、語る。―家族、弟子、咄家たちが語る内緒の素顔

志ん生、語る。―家族、弟子、咄家たちが語る内緒の素顔