昨日に続き歌謡曲の本。この本がオモシロイのは、ジャズ評論の大家・相倉久人氏が語る日本ポップス文化論なのだ!
「エノケン、美空ひばり、服部良一、坂本九、クレージーキャッツ、軍歌、
百恵・聖子・明菜・奈保子、ユーミン、大瀧詠一、シャ乱Q──戦前・戦中のヒット曲・軍歌から、戦後のアイドル、ニューミュージックまで、流行歌を通して昭和を見る!」なかでも印象的な章を紹介しよう。
松村 山口百恵は『スター誕生』で準優勝。この準優勝っていうのは良かった。
相倉 コンテストってみなそうですよ。だいたい準優勝グループが伸びます。『イーストウエスト』でも優勝した「子供ばんど」はライブではウケるんですが、レコードが売れない。二位以下はいいんです。カシオペアだとか、シャネルズだとか。サザンオールスターズも3位か4位でしたね。結局、優勝するバンドっていうのは、アマチュアのくせにできあがってるんですよ。だからそれ以上伸びない。プロデューサーも手をつけにくいでしょ。完成してるから。ところがね、優勝できないっていうのは、どっか欠点があるからなんですよ。そこを伸ばそうとする。それと、伸びるのは、やっぱりボーカルがいいグループですね。
松村 僕はこれまで300人か400人くらいインタビュー取材をして、その中で、ジャズ、ロック、フォークなんかを全部含めていちばん頭が切れたのが、山口百恵なんですよ。インタビュー終わってね、疲れましたもの。インタビューしているこっちがね、全部搾り取られる感じがするんですよ。
相倉 松田聖子の発言で有名なのは、楽屋かなんかでしゃべってって、出番がくると「あっ、じゃあ、松田聖子になんなきゃ」って(笑)。要するに、松田聖子を演じてる。しかも、その演じてるということをファンが知っているということを、彼女は知ってるわけですよ。そういう頭の良さです。
松村 フォークが、じつは日本的なものを表現していた、友川かずきの歌を聴くと、それがよくわかると思います。彼の歌は、宙に浮いていた外来のフォークソングを日本に着地させる逆三角形の先鋭的な一例だと思います。そこで、強烈な個性を持った彼の歌を、ちあきなおみというこれまた稀有の存在が歌ったらどうなるか。友川のパワフルな歌に、ちあきなおみの表現力が掛け算されると、もうブッ飛びますね。しかも1977年の「紅白歌合戦」でしょ。どういう理由でこの歌が選ばれたか、わかんないですけど。
相倉 ちあきなおみの底力ですよね。「四つのお願い」があって、歌が巧いっていうことはみんな知ってるわけだ。だけども本当にどれほどすごいものを持っているかという一つの極限として、これを持ってきたんだけど。これには、たぶん友川だってびっくりしたと思うよね。NHKのスタッフも、びっくりしたんじゃないかな。
やっぱり歌謡曲はいいねえ。聞き直したい、歌い直したいよね。オススメです。(・∀・)