「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールド」(中川右介)

   


山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと (朝日文庫)


70年代、仮面ライダーが放送され、歌謡番組が全盛だった。アグネス・チャン麻丘めぐみ天地真理などのアイドルが誕生したときに最も好きな番組が「スター誕生!」だった。そして桜田淳子が大好きだった。またたく間にトップアイドルになり、そして山口百恵に抜かれた…。


さて、この本。「数多くのタレントの中で、なぜ私たちは、彼女だけは忘れられないのか―。膨大な資料をもとに、本人と関係者の発言を徹底的に収集。すぐれた女優であり、そして伝統と革命を同時に達成した歌謡史上の奇跡である山口百恵」とその時代に迫る画期的評伝!」そのエッセンスを紹介しよう。


山口百恵は1973年春にデビューし、80年秋に引退した。スカウトされたときから数えても、芸能人としての活動期間は8年弱。引退したときは21歳だった。レコード大賞は受賞できなかったが、紅白歌合戦の紅組のトリを史上最年少(19歳)で努め、この記録はいまだにやぶられていない。さらに東宝の正月映画に7年連続して主演した大映画女優でもあった。歌手として、女優として、写真モデルとしても当代一だった。その山口百恵がマイクを置き、カメラの前から姿を消して30年以上が過ぎた。


・この本は、8年にわたる芸能活動での当時の「発言」をベースに、関係者が当時あるいは後に語ったこと、書いたことを補助線として山口百恵とその時代」の線描画を描こうとするものだ。山口百恵の生涯は、芸能人になったという点以外では平凡だが、山口百恵が歌い、演じたヒロインたちは、そうではなかった。「歌」においては職業や年齢がはっきりと明示されたものはないが、さまざまなキャラクターの、それぞれの恋の物語が展開された。


・無数の元アイドルの中で、芸能活動をせず、メディアに出ないのにーあるいは、それゆえになのかー山口百恵だけは忘れられない。散り際の見事さ、絶頂期での引退だけが「いまも続く人気」の理由ではない。その前段階での「時代と寝た女」とまで評された「時代の顔」としての活躍があってこその、「散り際の見事さ」だったのだ。虚構の世界で虚構の人物を演じながらも、自分を見失うことなく生き抜いたひとーそれが山口百恵である。彼女の強靭さに、30数年が過ぎた現在、改めて驚愕する。


阿久悠によれば、桜田淳子と似ていたために、山口百恵「淳子の暗いの」とスカウトの間で陰口を叩かれていたともいう。桜田淳子さえ知らなければ、山口百恵も十分に明るく可愛い子だったはずだが、人々は数ヶ月前に桜田淳子を知ってしまった。どうしても比較してしまい、あとから出てきた百恵は劣って見えたのだ。それは彼女がデビューしてからの一般の人々の反応も同じだった。


横須賀ストーリー」が新鮮だったのはサビが冒頭にくるという形式上の「型破り」もあれば、その歌詞が「これっきり」というのも、前代未聞だった。普通は、何かが提示され、それに対して「これっきりですか」と問いがある。だが、この歌では、いきなり「これっきりですか」なのでいったい何がこれっきりなのか、分からない。どうしても続きが聴きたくなるではないか。


なぜ横須賀なのだろうか。なぜこの物語の舞台は横須賀でなければならなかったのか。それはこの物語が「山口百恵ストーリー」とでもいうべき物語だったからだ。この物語の主人公は、山口百恵その人なのである。「歌手にならなかった」山口百恵が主人公だ。今も横須賀に住み、普通の高校生として恋をしている山口百恵、それがこの歌の主人公なのだ。阿木耀子は、この曲を書く前に山口百恵に会っていない。彼女から横須賀時代の想い出を取材したわけでもない。だからこそ、純然たるフィクションとなり、それゆえにリアリティを持つという、最も理想的な歌謡曲が出来上がった。


その他、山口百恵デビューした前後の芸能界」「スター誕生!前史」「阿久悠の時代とスター誕生!」「阿久悠との確執」「デビュー当時の青い性路線」「ひと夏の経験と伊豆の踊子」「女優開眼と宇崎竜童&阿木耀子」「19歳での頂点」「恋人宣言」「伝説から神話へ」など。


70年代の息吹が、あの時代の色が思い出される…。あの頃は良かったなあ…。山口百恵の偉大さがわかる。超オススメです。


   


山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと (朝日文庫)