「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「舟を編む」(三浦しをん)

映画にもなったこの本。ようやく読むことが出来ました。感動っ!辞書に関わる人の情熱をひしひしと感じられる。


「玄武書房に勤める馬締(まじめ)光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中 で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は 完成するのか──。言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる三浦しをんの最新長編小説」そのエッセンスを紹介しよう。


辞書を作ったひとたちの努力と熱気が伝わってくる気がした。一見しただけでは無機質な言葉の羅列だが、この膨大な数の見出し語や語釈や作例はすべて、誰かが考えに考え抜いて書いたものなのだ。なんという根気。なんという言葉への執念。俺はどうしたって、辞書を作りたい。俺の持てる情熱と時間のすべてを注ぎ込んで悔いのないもの。それが辞書だ。


・「『大渡海』というのは、うちの編集部で作ろうとしている、新しい辞書の名前だ。海を渡る、と書く。辞書は、言葉の海を渡る舟だ。海を渡るにふさわしい舟を編む


・「我々は、辞書にすべてを捧げねばなりません。時間もお金も。生活するために必要な最小限を残し、あとはすべて辞書に傾注せねばならない。家族旅行。遊園地。言葉は知っていますが、わたしは実際を知らない。そういう生き方を理解してくれる相手かどうかは、きみ、大変重要なことですよ」


・作るのに莫大な金がかかるのはたしかだが、辞書は出版社の誇りであり財産だ。人々に愛される辞書をきちんと作れば、会社の屋台骨は20年は揺るがないと言われている。


どれだけ言葉を集めても、解釈し定義付けをしても、辞書に本当の意味での完成はない。一冊の辞書にまとめることができたと思った瞬間に、再び言葉は捕獲できない蠢(うごめ)きとなって、すり抜け、形を変えていってしまう。辞書づくりに携わったものたちの労力と情熱を軽やかに笑い飛ばし、もう一度ちゃんとつかまえてごらんと挑発するかのように。馬締にできるのは、ただ、言葉の終わりなき運動、膨大な熱量の、一瞬のありさまをより正確にすくいとり、文字で記すことだけだ。


有限の時間しか持たない人間が、広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎだしていく。こわいけれど楽しい。やめたくないと思う。真理に迫るために、いつまでだってこの舟に乗りつづけていたい。


記憶とは言葉なのだそうです。香りや味や音をきっかけに、古い記憶が呼び起こされることがありますが、それはすなわち、曖昧なまま眠っていたものを言語化するということです。


なにかを生み出すためには、言葉がいる。岸辺はふと、はるか昔に地球上を覆っていたという、生命が誕生するまえの海を想像した。混沌とし、ただ蠢くばかりだった濃厚な液体を。ひとのなかにも、同じような海がある。そこに言葉という落雷があってはじめて、すべては生まれてくる。愛も、心も。言葉によって象(かたど)られ、昏(くら)い海から浮かびあがってくる


個人的には、どうでもいいことなんだけど、「ヌッポロ一番しょうゆ味」が気になるなあ…!第二弾が読みたい。オススメです。