「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「修身教授録 現代に蘇る人間学の要諦」(森信三)

森信三先生といえば、戦前・戦後を通じて、日本の教育界最大の人物であると言われる。私が森先生を知ったのは、ハガキ道坂田道信先生と徳永康起先生を通じてである。

その森先生の名著中の名著がこの本『修身教授録』。ようやく読むことが出来ました。本書は、大阪天王寺師範学校(現・大阪教育大学)本科での先生の講義をまとめた(全5巻、昭和14年刊)の中から、昭和12年3月~昭和14年3月までの2年間の講義を改めて編集したもの。そのエッセンスを紹介しよう。


・われわれ人間というものは、すべて自分に対して必然的に与えられた事柄については、そこに好悪の感情を交えないで、素直にこれを受け入れるところに心の根本態度が確立すると思うのであります。さらに一歩をすすめて「天命」として謹んでお受けをするということが大切だと思うのです。同時に初めてわれわれは、真に絶対的態度に立つことができると思うのです。


・われわれ人間にとって、人生の根本目標は、結局は人として生をこの世にうけたことの真の意義を自覚して、これを実現する以外にないと考えるからです。そしてお互いに、真に生き甲斐があり生まれ甲斐がある日々を送ること以外にはないと思うからです。そのためには、われわれは何よりもまず、この自分自身というものについて深く知らなければならぬと思います。


・実際この地上の生物の数は、人間のそれと比べていかに多いか、実に測りがたいことであります。しかもお互いにそれらのいずれでなくて、ここに人間としての「生」を与えられたわけですが、しかしそれは、何らわが力によらないことに思い及べば、何人もうけたことに対して、しみじみと感謝の心が湧き出るはずであります。しかし現代の人々は、自分が人身を与えられたことに対して、深い感謝の念を持つ人ははなはだ少ないようであります。


・諸君も今から気をつけて、弾力のある人間にならなかれば駄目です。ところで弾力のある人間になる最初の着地点は、何といってもまず読書でしょう。ですから、若いうちから努めて良書を読むことです。また若いうちは、文学や詩歌など大いに読むがよいでしょう。また短歌や俳句などに趣味を持つことも大切です。


・すべて物事というものは、これを準備するには、随分と永い時間を要するものですが、さてそれを見るとか味わうとかいうことになりますと、それを準備するに要した時間の幾分の一にも足りない短時間に、否、時にはそれ以上ですんでしまうものでもあります。食事の如きも花火の如きも。どうように今人生においても、よほど早くからしっかりと考えて、長時間の準備をしておかないと、真に国家社会のお役に立つ人間にはなれないでしょう。


偉人の伝記を読むがよいでしょう。そして進んでは、その偉人をして、そのような一生をたどらせた、真の内面的動力はいかなるものであったかを、突き止めるということでしょう。かくして偉人の書物を繰り返して読むということは、ちょうど井戸水を、繰り返し繰り返し、汲み上げるにも似ていると言えましょう。


・われわれは、一体何のために学問修養をすることが必要かというに、これを一口で言えば、結局は「人となる道」、すなわち人間になる道を明らかにするためであり、さらに具体的に言えば、「日本国民としての道」を明らかに把握するためだとも言えましょう。またこれを自分という側から申せば、自分が天からうけた本性を、充分に実現する途を見出すためだとも言えましょう。


・自己の天分の発揮ということは、実は単に自分のことだけを考えていたんでは、真実にはできないことであります。すなわち人間の天分というものは、単に自分本位の立場でこれを発揮しようとする程度では、十分なことはできないものであります。ではどうしたらよいかというに、それには、自分というものを超えたある何物かに、自己をささげるという気持ちがなければできないことだと思うのです。


・読書が、われわれの人生に対する意義は、一口で言ったら結局、「心の食物」という言葉がもっともよく当たると思うのです。つまりわれわれは、この肉体を養うために、平生色々な養分を摂っていることは、今さら言うまでもないことです。諸君は、差し当たってはまず「一日読まざれば一日衰える」と覚悟されるがよいでしょう。


今から70年以上前の講義だが、一行一行がひしひしとジワーっと心に沁みるメッセージだ。名著です。オススメです。(・∀・)