常に図書館から20冊借りていて、20冊予約してある。だから「読みたい!」と思ってから数ヶ月経ってから読むので、なぜその本を読みたくなったのか、分からなくなってしまうことも多い。この本もそうだ。表紙の犬、そして「ニッチを探して」というタイトル。そうか、ニッチという愛犬がいなくなって、それを探しに行くストーリーなのか!?と思っていた…。全然違うっ!!!(゜o゜)
「会社を辞めたい人、すべてを捨てて失踪したい人、居場所を探している人、必読!!大手銀行に勤務する藤原道長は、行内で背任の容疑をかけられ、妻と娘を残し失踪する。サラリーマン生活の離脱初日は優雅に鮨をつまみ高級ホテルへ、翌日からは下町の酒場、公園の炊き出し、路上、そして段ボールハウスへ――。所持金ゼロで生き延びるためのニッチ(適所)はどこにある?東京をサバイバルする実践的サスペンス」そのエッセンスを紹介しよう。
・今日がどういう日になるのか、まったく予想がつかない。自分が何をしたいのかもわからない。ただ、徒に空腹を満たし、喉の渇きを癒やすために行動するだけで、それ以外にはやることがない。このいかんともしがたい手持ち無沙汰。離脱の疎外感がじわじわと道長に迫ってくる。
・行きてゆくのにカネなんかいらない。炊き出しもあるし、寝る場所もある。水は公園の水飲み場からタダでもらえる。洗濯や水浴びはトイレでできる。電気は廃品回収で手に入れた家庭用発電機から取る。炊事はカセットコンロでできる。テレビやパソコンやカメラも拾った。カラオケ・マシーンを持っている仲間もいる。でも、少しはカネも必要だ。酒や煙草やコーラやラーメンはプライスレスとはいかない。電気を使うのに原発はいらないが、燃料はいる。嗜好品や燃料が欲しければ、働くか、生活保護をウケるか、いろいろな方策を練らないといけない。私はそうしたアドバイスならいくらでもします。
・心定まらぬ者、見放された者が乗る電車は山手線と決まっている。漫然と楕円上に都心部を周遊するうちにきっと何か閃くだろう。それに自らを遠くへ放り出すためには、大きな軌道で回転し、遠心力をつけなければならない。山手線は道長を都心から弾き飛ばすに充分な力を与えてくれるだろうか?
・かくも過酷な路上生活より、刑務所ぐらしの方がどれだけましか…。道長はなるべくそう考えないようにしてきたつもりだが、夢に片足を突っ込むと、抑圧した想念が表立ってくる。確かに、刑務所か、拘置所か、留置場にいれば、三食の支給もあるし、トイレ付き、ベッド付きの部屋もあてがわれる。廃車に籠り、空食や野草で腹を満たしたり、胃痛や吐き気に耐えたりしなくてもいいのである。
いや〜生々しい…。まるで実際にホームレス生活を実践してきたようだ!後半のスピード感は意外や意外!道長は家族の元へ戻るのか?戻れるのか?超オススメです。(・∀・)