「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「刑務所で死ぬということー無期懲役囚の独白」(美達大和)

  


刑務所で死ぬということ


この本は貴重だ。刑務所の中でもその頂点の無期懲役がどのように服役しているのか?どういう日常を過ごし、何を考えているのか?を綴った本なのだ。ある意味想像を絶する環境と内容なのだ。そのエッセンスを紹介しよう。


・全国の矯正施設は77ヶ所ありますが、その頂点のLB(刑期10年以上、再販の受刑者)級刑務所は7ヶ所しかありまん。当所もその一つですが、入所している長期計受刑者の約半数が殺人犯、私は二人の命を奪い、社会を離れて20年になる無期懲役です。平成22年現在6万2000人の受刑者がいて、毎年3万人前後が出所し、同じく3万人前後が入所し、長期受刑者は全体の3%、100人中3人の狭き門です。「俺達ってエリートって訳っすね、美達さん」とまあ、こんな感じです。カラッと明るいのが殺人犯たちの特徴です。


・受刑者は約47%までが中学卒業まで、高校中退が22%、卒業が24%、大学中退が3%、卒業が4%となっています。IQ80前後が普通であり、標準とされるIQ100以上は5%くらいしかいないと言われています。


獄の中の最大の敵は寒さ、暑さです。自由に服を着たり脱いだりできない、汗を拭けない、拭いたタオルを洗わせない、という施設が多いのも一つの理由です。


受刑者たちは大概の者が己の悪行と向き合うこともなく、目前のちっぽけな快楽と欲望のことしか頭にないことを知りました。正常な神経を持つ者と遭遇するのは、ごくごく稀です。人間はこれほど堕ちることができるのかと、自分も同じ受刑者であることを忘れて唸りました。反省しないどころか、自分が長い服役をすることになった理由を、亡くなった被害者のせいにしているのです。「その場にいたのが悪い」「途中で帰ってきたら、殺さずにいられなかった」「盗もうとした自分の邪魔をした」「あいつさえいなければ、こんな所に入らずに済んだのに」殺人の罪の意識もありません。


・40代前後でも通算服役年数が20年、還暦や古希を過ぎた者には半世紀以上、刑務所で暮らしている者も少なくありません。成人してから古希近くまで、社会で正月を過ごしたことがない。あったとしても一回だけ。あるいは6ヶ月以上、社会に出たことがないという者も何人かいるくらいです。


「あと何年有るの?満期まで?」「5年を切ったよ」「えーっ、もうそんなもんなの。右向いたら終わりだね、それなら。早いなあ」10数年は我々長期受刑者にとっては束の間とも思えます。

浦島太郎のように時間の観念がなく、そのうえ、反省もせず、テレビを見て、同囚とバカ話をして楽しく過ごすことが、受刑者にとっての懲役刑なのです。


・受刑者になる前は、刑務所というところは教育施設だろうと考えていましたが、現実は狂育施設でした。法律や規則は、現場の状態をよく調べ、矯正という理念に合うように制定すべきです。


「自分がされたら嫌だと感じることはしない」というのが普通ですが、獄の中では「自分がされたら嫌だと感じることは、より弱い者に対してする」ようになっています。


・彼らは日々の暮らしに流されているだけで、考えることはありません。工場等の人間関係に於きましても、いかに楽をするか、いかに捕まらずに悪事を重ねて金を得るかということは話し合いますが、「自分がこの世に生きる意味」や「どのように更生を進めるか」「現在の境遇が自分に問うことは何か」という話題は全くないという状態です。


出所してからの楽しみのベスト3は、酒・女・食べる。これに迫るものとしてクスリ(覚せい剤やドラッグ)ギャンブル、風呂、煙草があります。食べたい物のベスト3は、肉・寿司等の生もの、パン類(厚切りで熱いトースト)であり、他にマック・吉野家・ケンタッキー等のファストフードが続きます。ちなみに出所後は、興奮状態にありますので、酒を呑んでも酔わないそうです。


・獄での暮らしが長くなりますと、人間が社会で生活する時には、いかに余分な物を持っているかに気が付きます。我々は、居室衣一着と工場衣二着で、二三年を過ごしますが、慣れてみますと、このあっさりとした暮らしは、快適です。


その他、「殺人犯たちはどのようなことを考えているのか?懲役は人間をどう変えるのか?獄で老いるとはどういうことなのか?悪に生きるヤクザの悩みとは何なのか?父親が殺人犯であることを知った子供はどう感じるのか?刑務所に入ることはリクスではなく生活の一部?」「鬼も人の子、人の親」「受刑者の心の真実」「悪党ランドの生活」「刑務所と縁が切れない」「ホームレスを人を評価しています」「刑務所で老いるということ」「獄死」など。


なるほど……なるべくしてなったのか……そういう因果を持っているのか……朱に交われば赤くなるということなのか……フツーに暮らすことがどれだけ素晴らしいことなのか、が分かる。今年読んだ本のベスト10入りだね。超オススメです。


  


刑務所で死ぬということ