- 作者: 二宮尊徳,小林惟史,児玉幸多
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/03/09
- メディア: 単行本
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BOOK〜童門版尊徳先生!…『小説 二宮金次郎』(童門冬二)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20091024
BOOK〜今年最高の本!…『二宮金次郎の一生』(三戸岡道夫)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20091009
この本は、尊徳先生の門人として尊徳の身の回りに随行していた福住正兄が、尊徳の言葉を書き記したもの。まさに、日本の「論語」と言える著作。そのエッセンスを紹介しよう。
・尊徳はいわゆる農学者ではない。むしろ学者と坊主をきらうと公言していた。ところが、晩年の彼の周囲に多くの門下生や崇拝者が集まっていた。かれらは、尊徳の言行録を残して多く後世に伝えた。とくに「二宮尊徳全集36巻(一冊1000頁余)」があり、その原本2500冊は日光市今市の報徳文庫に収蔵されている。先年ドイツの学者がこれを見て世界一大量の著述であると折り紙をつけていた。
・彼の学問は机上の死学問ではない。胸中の疑問を解決するためである。同時に、納得した解決策を直ちに実践しようとするものであった。
・人間にとって何が重要であるのか。心底からの心の喜びである。金や物財ではなく、具体的な仕事そのものから得られる喜びである。少年金次郎はわずかの菜種を植えて何升かの実を得た。十七歳の時のことである。捨てられていた苗を荒地の水たまりに植えてみたら、秋に一俵余の籾米がとれた。意外な収穫によって得た喜びはたとえようがない。物を創る、無から有を生ずる創造の喜びーこの喜びは金で買えるものではない。人が道端に棄てて顧みないものを価値あるものに蘇生させるそのうれしさは、たとえようもないほど大きいことを冷暖自知した。そしてこの喜悦の情こそが物を創る者への自然のめぐみ、報酬であると彼は悟ったのである。
・翁はこう言われた。大事をなそうと欲すれば、小さなことを怠らず勤めよ。小が積もって大となるものだからだ。およそ小人の常で、大きな事を欲して、小さな事を怠り、できがたい事を心配して、できやすい事を勤めない。それで、結局は大きな事ができないのだ。大は小を積んで大になることを知らないからだ。たとえば、百万石の米といっても粒が大きいわけではない。万町歩の田を耕すのも、その作業は一鍬ずつの仕事っである。千里の道も一歩ずつ歩んで到達する山を作るのも一畚(もっこ)の土からなることをよく知って、よく励んで小事を勤めたならば、大事も必ずなるだろう。小さい事をゆるがせにする者には、大きな事は決してできないものである。