- 作者: 江川卓,掛布雅之
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/04/10
- メディア: 新書
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さて、この本80年代の宿命のライバル、江川卓氏と掛布雅之氏が語る「巨人−阪神論」そのエッセンスを紹介しよう。
・(江川) ピッチャーは、ストライクゾーンで勝負できるかどうかが重要なんですよね。いい方を変えれば、ストライクゾーンに投げても打てないボールがあるかどうか。例えばスライダーでもフォークでも真っ直ぐでもカーブでもいいんですけど、ストライクゾーンで勝負できるボールを持っているか持っていないかで勝てるか勝てないかが決まるんですよね。それが、僕の場合は、ギリギリの高めのストレートだった。これは見逃せばストライクなんです。近年はフォークボールが全盛です。でも、これは降らなければボールなわけですよ。フォークは投げた瞬間に結果をバッターに依存するわけですよ。でも僕の理想を言えば、バッターが見逃してもストライク、振っても当たらないというボールが決め球なんです。
・(掛布) こんなこと言うと、フォークボールをウイニングショットとして投げているピッチャーに失礼かもしれないけど、ある意味逃げだよね。弱いよね、気持ちが。ボールとバットが当たらないボールなんだろいう部分でね。ストレートは、バッターがバットを振るボールでしょ。それを使って江川が攻めてくるから、そこに恐怖が生まれるわけですよ。しかもインコースのちょっと高めのボールというのは、僕だけでなく、バッターの弱点のゾーンですよね。ただ、一つコースが甘くなれば、今度はバッターの得意なゾーンに変わるわけですよ。そのあたりの際、際を投げ込んでくる、この強さ。そのボールを見せられたときに打者として非常に怖さを感じてしまうものがあるんですよ。江川は、どんどんそこに投げ込んでくる。
・(江川) 9回を全部全力だと、どこかで必ず落ちるところが来てつかまるんですよ。当然ですが、後半になればなるほどつかまりますよね。それをつかまらないようにするにはバッターによって球の質を変えていくしかないんですよね。中心バッターに関しては、最高の出力まで上げるわけですよね。昭和60年前後の阪神で言えば、掛布とバースに岡田、3人ぐらいまでには、絶対最高の出力でいくんです。
・(掛布) 今の野球では、7回、8回、9回のリリーフが注目されいてるよね。でも江川はそれを使わなかったわけでしょう。7回、8回、9回にもう一度、初回で見たようなストレートを投げてくるわけなんだよね。だからバッターはお手上げなんですよ。最後の上がり3イニングで150キロのボールを見せられれば、バッターは絶対に手も足も出ない。
・(江川) ガッツポーズをやる瞬間というのをいくつか決めていたんで(日本シリーズと20勝した瞬間)それ以外は別に…という考えですよ。
・(掛布) 僕もホームランを打ってもガッツポーズをしなかった。その場で勝負がついているのにダウンしている相手を蹴っ飛ばすような行為はしなくないと思ったし、「打って当たり前だと自分で思え」と考えていた。だから淡々と走るわけですよ。今の選手は、ちょっとガッツポーズし過ぎじゃない?野茂英雄もしなかったよね。真のエースも真の4番でも同じじゃないかな。王さんが両手を挙げたのも世界記録を達成した瞬間だけじゃない?
・(掛布) 長嶋さんは敵味方を超越した中で、レベルの高い素晴らしい野球をファンの方に見せたいという気持ちが非常に強い人なんだと思ったね。僕の調子が悪いときには電話がかかってきた。いわゆる電話事件。電話口で「ちょっとバットを振ってみろ」と。「バットが、そこにあるか」と言われるんで、「あります」と答えると「ちょっと持ってみろ。構えてみろ」と。「ああ、はい。こうですか」と、受話器をアゴに当てながらバットを構えると、「そうだ、それでいいんだよ」って。僕は僕で妙に「そうですね」と納得してしまうものがあった。(笑)長嶋さんとしては江川と勝負するのに対しても、プロとして本物の頂点の勝負を見せたいという気持ちが強かったんだろうね。
その他、「江川対掛布の名勝負伝説」、「早すぎた江川引退の理由」、「王貞治論」、「巨人阪神の伝統」、「監督論」なども読みごたえたっぷり。江川監督と掛布監督の対決も近いかも!?おススメ!(^<^)