- 作者: 森達也
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 単行本
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偶然か必然なのか、そんな時にナントこの本を読んでいた。読みたくないが、読んでみたい自分も、読みながら考えている自分もいる。
私たちは「死刑」という制度についてどの程度知っているのだろう?「国家による殺人」なのだろうか?人を殺した人はどんなふうに殺されるのか、そもそも死刑になる人たちはどんな人たちなのか?死刑の起源と歴史、死刑囚の日常とは?どんな暮らしをしているのか?死刑判決を受けるとき、何を思うのか?死刑執行の当日はどんな風に過ごすのか?東京拘置所の刑場はどうなっているのか?刑務官の仕事とは?アメリカの死刑の徹底した情報公開の中身とは?EU(欧州連合)はなぜ死刑廃止しているのか?再犯防止の効果は本当にあるのか?冤罪事件の当事者はどう思っているのか?…などなど死刑の是非をあらゆる角度から調査し、関係者とのインタビューをまとめたのがこの本。
死刑は廃止すべきか、存続すべきか!?この結論は出せそうにないが、この本の中で特に印象に残った文章を紹介しよう。
・実の弟である明男を1984年に殺害された原田正治は、当初は主格犯の長谷川敏彦を激しく憎悪して極刑を願う、しかし獄中の長谷川から何度も謝罪の手紙をもらい死刑確定直前に初めて面会を果たした原田は、その深い反省に触れると同時に、長谷川の姉や子供が逮捕後に自殺したことなども知り、彼を処刑したとしても誰も救われないと考えるようになる。その心境の変化を、原田は以下のように記述する。
その頃、僕は、こんなことをイメージしていました。明男と僕ら家族が長谷川君たちの手で崖から突き落とされたイメージです。僕らは全身傷だらけで、明男は死んでいます。崖の上から、司法関係者やマスコミや世間の人々が、僕らを高みの見物です。
彼らは、崖の上の平らで広々としたところから、「痛いだろう。かわいそうに」そう言いながら、長谷川君たちとその家族を落とそうとしています。僕も最初は長谷川君たちを自分たちと同じ目に遭わせたいとおもっていました。しかし、ふと気がつくと、僕が本当に望んでいることは違うことのようなのです。
僕も僕たち家族も、大勢の人が平穏に暮らしている崖の上のい平らな土地にもう一度のぼりたい、そう思っていることに気がついたのです。ところが、崖の上にいる人たちは、誰として「おーい、ひきあげてやるぞー」とは言ってはくれません。代わりに「おまえのいる崖の下に、こいつらも落してやるからなー。それで気がすむだろう」被害者と加害者をともに崖の下に放り出して、崖の上では、何もなかったように、平和な時が流れているのです。
後半に、掲載されている、山口県光市母子殺害事件の被害者である本村洋氏のインタビューは、胸を締め付けられる思いだ…とても考えさせられる。
森達也氏のテーマは重いけど、いいね。この本も読んでね。おススメ。
BOOK〜みんなで考えよう!…『いのちの食べかた』(森達也)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20090413