「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「A3(エースリー)「上」「下」」(森達也)

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A3 上 (集英社文庫)

A3 上 (集英社文庫)

 

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A3 下 (集英社文庫)

A3 下 (集英社文庫)

  • 作者:森 達也
  • 発売日: 2012/12/14
  • メディア: 文庫
 

ドキュメンタリーディレクター、テレビ・ドキュメンタリー・ディレクター、ノンフィクション作家の森達也氏。好きなんだよねー!どの作品もその切り口と分析力、表現力。この本は中でも最高傑作!史上最凶最悪といわれた地下鉄サリン事件など一連のオウム真理教事件。その真実な何だったのか!?「A」というのは麻原彰晃の「A」だ。

 

「判決の日、東京地裁で初めて完全に「壊れている」麻原を見た著者は愕然とする。明らかに異常な裁判に、誰も声をあげようとしない麻原彰晃とその側近たちを死刑にすることで、すべてを忘れようとしているかのようだ―戦後最凶最悪と言われたオウム事件によって変わってしまった日本。麻原とオウムを探り、日本社会の深層を浮き彫りにする。第33回講談社ノンフィクション賞受賞作」そのエッセンスを紹介しよう。
 
思い出してほしい。考えてほしい。あの事件はなぜ、どのように起きたのか。彼と事件によって、この社会はどのように変わったのか。現在はどのように変わりつつあるのか。そして、彼とはいったい、何ものであるのかを、何を思い、何を願い何をしようとしていたのかを。
 
熊本日日新聞・春木進麻原に対しての思いをひと言にすればね、かわいそうという感覚です。かわいそうというより痛々しいという感じかな。それは確かにありましたね。実際に合ってみれば、カリスマ性なんて全然感じられないただの人だったので、少しだけがっかりしたことを覚えています。でもね、ニコッと笑うときの庶民的な雰囲気というか、とにかく笑顔が魅力的な人でした」
 
五人の兄弟のうち、長男と智津夫、そして五男は、先天的に目に障害があった
 
・1 麻原は在日二世らしい
 2 麻原が生まれた地域は被差別部落らしい
 3 麻原の実家は水俣病の被害者らしい
 
僕の周囲では、この3つの噂すべてが適合しないまでも、ひとつくらいは当てはまるだろうと誰でもが思っていた。そして決して大きな声では言えないことだった。
 
・「……ただ私は、彼が小さい頃のわずかな印象と、その家の雰囲気を見ていまして……勘ですよ。何の根拠もなかです。でも何か、のせられたんじゃないだろうかなあという印象がありましたけどねのせられたというか、操られたというかそんな気がしたんです。」
 
・「松本くんについては、普通の高校生、元気な高校生という思いしかないですからね。とにかく笑顔が印象に残る子でした
 
・面会を終えた次女と三女は目の前にいる自分たちの存在をお父さんは認識しない』と言ってました。何度話しかけても反応はない。いきなり車椅子で、しかもオムツをしていて、その理由はわからないって、これは普通のことですか。これを異常と感じないならば、いったい何が異常なんですか
 
拘置所にいる麻原について、僕は「あること」を知っている多くの講師書関係者も知っている。でも面会時に彼が頻繁に行うというその「あること」が何であるかは、今はこの誌面には書けない。書けない理由も書けない。もう少しときが経てば書けるかもしれない。だから須田賢裁判長に訊きたい。あなたはこれを知ってなお、麻原被告に責任能力が、訴訟能力があるというのか
 
・「話が上手いんです。もそもそって低い声でしゃべるのだけれども、何となく引き込まれるというかね、そんな天性の魅力は確かにありましたね。それでね、バカじゃないです。話に説得力があるんです。何となくね、変わった男だなあって思っていましたけれど。…何であんなに変わっちゃったんだろうなあ。そんな殺人を犯すような、国家を転覆させるような、そんなことをする印象はなかったんですよ、はっきり言って。やっぱり周りでしょうね。いろんな人が集まってきて、自分の人生に錯覚を起こしちゃったんでしょうね。」
 
・「まあ、孤独だったということですよ。家族とも縁が薄い。友人もいない。本当に理解してくれる人がいない。結局は自分なりに生きていかなきゃいけない。それがだんだん、しまいにはああいう化けものになっちゃった。」
 
・「弟の智津夫さんの目の疾病は水俣の水銀のせいじゃないのかなって。そんな風に想像してしまったんです。実は僕が満弘さんの所をお訪ねしましたのは、その一点をお伺いしたかったからです」仮に麻原が国家転覆やクーデターを本気で考えていたとしたら(裁判所はそう認定している)、彼が国家事業の被害者としていつかは失明する自分の運命を知っておりしかも患者として認定されず救済されかなったという事実関係の把握は、とても重要な意味を持つはずだ。
 
麻原はレセプターだ。一つひとつのニューロンは、このレセプターが好む情報(神経伝達物質を選択しながら運んでくる。そこに競争原理が加わり、過剰な忖度も加わり、側近たちがやがて、麻原が好む情報を無自覚に捏造するようになる。でも麻原にはその真偽の判定はできない。そうかそうかとうなづくだけだ。こうしてレセプターは肥え太る。与えられたカロリーのほとんどは、米軍やフリーメイソン創価学会や警察権力などから自分たちは攻撃されいるとの危機意識だ。麻原は、側近たちにとっては唯一のマーケットであり、側近たちは麻原にとってかけがえのないメディアだった
 
・時系列で見ると、麻原氏の発想はどんどん縮小しているんです。救済のために世界中の人をポアするという計画から始まって、やがてその標的は国家になり、さらに都市になり、最後は電車の中の乗客です。もちろん地下鉄サリン事件は大きな被害を出しましたけれど、麻原氏が当初考えていたことは、あれを世界規模で起こすことでした。(検察が主張するような)麻原の妄想が徐々にエスカレートしていったというのはまったくの間違いです。向きが逆なんです
 
・そのときに自分が何を思うのかはわからない。でもこの社会がどのような反応をするかはわかる。それはきっと圧倒的なまでの無関心だ
 
「演歌歌手、松島小優希が実の姉」って知らなかったなあ…。きっとこの本が真実なのだと思う。死刑判決によって真実が失われてしまった中、よく取材したねえ。個人的に新実智光人間性が優しく、切なく、悲しい……。傑作です。超オススメです!(・∀・)
 

 

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A3 上 (集英社文庫)

A3 上 (集英社文庫)

 

 

 

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A3 下 (集英社文庫)

A3 下 (集英社文庫)

  • 作者:森 達也
  • 発売日: 2012/12/14
  • メディア: 文庫