- 作者:山口 秀範
- メディア: 大型本
千の風になって ドラマスペシャル
『死ぬんじゃない!〜実録ドラマ・宮本警部が遺したもの〜』
http://wwwz.fujitv.co.jp/ichioshi08/080215sen/intro.html
地元の交番のお巡りさんの名前を知っている人がどれほどいるだろうか?
なぜ、地元の人に、『宮本さん』と呼ばれ慕われていたのか?なぜ、多くの人が 『あの人なら危険を顧みず飛び込むだろう』と言われていたのか?私はとても惹かれていた。
この本はその宮本さんの人生を絵本にしたもの。…この本は、泣けた、泣けた…。(T_T) 彼の人柄と人間性と志がグサッと胸に刺さって感動の渦に巻き込まれた…。ウチ(SA)のスタッフに貸したら、みな異口同音に『感動した!』といって涙と鼻水の跡がページに染みになってしまったほどだ。(^_^;)…図書館から借りた本なのに……。
タイトルの『伏してぞ止まん』は、宮本さんのお父様の口癖で、『精一杯努力したうえで、もう一度踏み出し、うつ伏せに倒れるまで止めるな』という教え。
小さい頃から運動が得意でなく、読書が好きな少年だった。そんな彼が正義感だけで警察官を目指した。剣道もだめ、警察学校では前代未聞の自転車の運転の居残り特訓…。しかし誰よりもコツコツ努力して、剣道三段を取るまでになった。同期が、刑事や公安や機動隊を目指す中、彼は駐在所勤務を目指した。
『私はね、人の上に立つよりも、現場でお年寄りや子供たち、困った人の声を聞いて、自分の手で解決する。そういう仕事の方がすきなんだよね。生涯一お巡りさん!』
男の子の自転車を直したり、迷惑メールで困っている女の子の話を真剣に聞き、『大丈夫だよ』と鼓舞したり…。
『子供っていうのはね、小さいころから知ってると、不良になってもよく言うことを聞くんですよ。だから、できるだけ多くの子供たちと、顔見知りになっておこうと思ってね』
そしてあの事件が起こった…。意識不明の重体となった彼がいない交番には、『宮本さん、はやく元気になってください』『宮本さんを板橋区のめいよに思います。』と励ましの言葉やお見舞いの品々、手紙や千羽鶴で溢れていた。記帳台が設けられた交番には、訪れる住民が絶えなかった。
交番近くの商店主の男性は目に涙を浮かべ、こう話す。
『とにかく女性を助けなきゃという思いでいっぱいだったんだろう。もうあの大声と、交通違反を注意する独特の笛の音を聞くことができないんですねえ』
お葬式の時の奥様の言葉が泣ける。『夫の人間性、性格から考えて、これも天命として受け入れようと努力しています。お父さんの行動を誇りに思います。』
この本を読んで、『なぜ、月でうさぎが餅をついているのか?』という話を思い出した。
昔、 うさぎとサルとキツネの信心を梵天帝釈という神様が試そうとして、老人に化けて食べ物を下さいと請うたところ、 サルは木の実を、キツネは魚を捕ってきた。ところが、何も捕れるものがないうさぎは、火を起こすようにいった。そして自分を食べてくださいと火に飛び込んだのだ。これを哀れみ、帝釈は月にうさぎの形を移し、人々に知らせたという話だ。
大袈裟な話かもしれないが、宮本さんは高貴なお坊さんの生まれ変わりだったのかもしれない。この本を多くの人に読んでもらいたい、そして何か感じ取ってほしい。心より宮本さんのご冥福を祈ります。
2007年 板橋・街の話題 誠の碑
http://business4.plala.or.jp/itakanko/kansub14matinowadai.html