全作品を読破している、ほしおさなえさんの著作。新刊が出るたびにじっくり味わって読んでいる。待望の『菓子屋横丁月光荘』の最新刊、完結編が出ましたよー!♪ 感動だよー!!!なんて優しい、なんという侘び寂び。リアルなセリフと人物描写。まるで実在しているような、フィクションとノンフィクションの中間のような展開は、ほしおさんならでは。(^^)
「家の声が聞こえるという力を持つ遠野守人は、月光荘二階をイベントスペースとしてオープンした後、管理人として慌ただしい日々を過ごしていた。そんな折、月光荘オーナーの島田から「社会人としての門出を祝おう」と狭山市の古民家を改修した蕎麦懐石店「とんからり」に誘われる。大学の恩師・木谷と三人で店を訪ねた守人を待っていたのは、自分が目指すべき道へとつながっていく、不思議な音との出会いだった。大切な過去、つながる縁、そして未来。感動のシリーズ完結!」そのエッセンスを紹介しよう。
・「アルバムを見てたら、諸行無常だなあって思いました。
・「『星の王子さま』にバラの話がでてくるでしょう? 王子は地球に来て、バラがたくさん咲いているところを見て、 悲しい気持ちになるんです。僕のバラは、 自分がたったひとつのバラだと思っているのに、 ここにはこんなにたくさんのバラがある、これを見見たら、 僕のバラは恥ずかしくなるだろう、って。」
・「世界には、 これまで生きてきた人たちひとりひとりの物語が漂っているんだと 思うんです。でも語る人がいなくなってしまうと、 だれにも見えないものになってしまう、だから、 あとの人たちに知らせるために、少しでも多くの人に話を聞いて、 それを文章にして刻みつけておきたい、って思うようになって」
・「僕はね、思ったんだ。この世界全体から見たら、人間はみんな小さくて、すぐに死んでしまう。みんな似たような、取るに足らないものかもしれない。でも、小さくてもみんな尊いと思うんだ。ありきたりでも、特別なことなんてなにもなくても、みんなと同じようなものを食べ、みんなと同じような仕事をして、みんなと同じようなことで笑って、みんなと同じような家を建て、そこで暮らして……。でもそれでじゅうぶんしあわせなんじゃないか」
・機というのは、ああやって動かすのか、と思った。マスミさんは楽しそうに機織りを続け、その糸の一本一本に、物語が宿っているのがわかる。
・「家の声には、それとまたちがった人格みたいなものがあるような気がする。ただ、それはもしかしたら、家にいた人やあったものの総体みたいなものなのかもしれない。だとしたら、その声のなかに喜代さんも混ざっているといえるのかもしれないし」
・「喜代さんが亡くなったことも相当辛かったみたいだし、敏治さんはあの家に対する思い入れも強い気がする。人って、家に根っこをのばして生きてるようなとこがあるでしょ」
・「この建物をそのままの形で保存したいわけじゃなくて、住める形にするのが第一なので……。不便なところは改装してもいいとも思っています。大切なのは、この家の魂で……」「魂?」「あ、いえ、ちょっと変な言い方ですが、この家の核になっている部分を残せればいい、ってことです」
・蚕は繭を作るでに4回脱皮する。それまでずっと桑の葉を食べ続けていたのにmある日いっせいに食べるのをやめ、動かなくなる。起きているときを「令」、眠っっているときを「眠」と呼ぶ。はじめの3回の眠は一日くらいだが、4回目は2日くらい眠り続ける。喜代さんは子どものころからときどき、長く深く眠り続けてしまうことがあり、蚕の眠のようだ、と言われていたらしい。
・オカイコサマは見てる。わたしたちの暮らしを。桑といっしょにそれを食べて、身体にどんどん溜めていく。オカイコサマの心は、ずっと遠くまでつながっている、ひとりのオカイコサマから別のオカイコサマへ、だれかの人生の物語が寄り合わさって、いつかひとりのオカイコサマがそれを吐いて繭にする、物語の糸は光っている。わたしにはそれが見える。わたしはそれを読むことができる。
・加代はだれにもいわなかったが、蚕の糸に人の一生が刻まれているのを知っていた、蚕が糸を吐くとき、その一生が見えるのだ。遠い国の見たことのない人たちのものが多かったが、村で亡くなっただれそれとわかるものもあった。
広瀬斜子(ひろせななこ)織ってあったんだね。
繭の糸の物語は、またこれでシリーズが出るんだろうなあ。出て欲しいなあ。川越と川島町に行きたくなりました。シリーズ全巻再読したい。超オススメです。(^^)