全作品を読破している、天才・東海林さだおさんの新刊。音楽でいうとベスト・アルバムだね。もう85歳だもんね〜!すごいなあ!何度読んでも頷いちゃうなあ!♪(・∀・)
「うまい、まずい」無しでここまで書ける? 累計360万部の大人気食べ物エッセイ「丸かじり」シリーズ傑作選。前人未踏の面白さ」そのエッセンスを紹介しよう。
「いじけ酒」
どうもこの、 ぼくはわれながらヘンな趣味だなあと思う趣味があって、 なかなかわるくないなあ、と、大いに気に入っている趣味がある。 いじけて喜ぶ、という趣味である。いじけている自分がいとしい。 いじけている自分が不憫である。不憫な自分がいとしい、 という堂々めぐりの趣味である。
趣味にはゴルフが趣味の人、 歌舞伎鑑賞を趣味とする人などいろいろいるが、 こういう人たちはそれぞれゴルフ場、 歌舞伎座に行くことになるわけだが、 いじけが趣味の人はどこへ行けばいいのか。 どこへいじけに行けばいいのか。「いじけ会館」 とかいうようなものであればいいのだが、いまのところはない。 でもぼくにはあるんですね。居酒屋です。ごくふつうの居酒屋。 居酒屋に一人で行く。みんなワイワイ、 ガヤガヤ楽しんでいる中にポツンと一人、ひっそりと飲む。 わざと一番隅っこの席にすわり、 周りの楽しそうな宴席をひがんだ目でチラリと見やり、 トクトクと手酌でつぎながら、「いいんだ、オレは」とつぶやく。 好きだなあ、こういうの。「いいなあみんな、 いっしょに飲む仲間がいて」と暗くつぶやく。好きだなあ、 こういうの。周りの人たちもこの孤独な客をチラと見やり「 仲間いないんだ、性格悪いんだ」と哀れんでいるにちがいない。 好きだなあ、こういうの。
古典的定食屋には守るべき本道がいくつかある。
①まずドア。これは手動でなければならない。 自動ドアの定食屋などもってのほかである。
②テーブル。デコラ。ないしビニールクロス。
③イス。鉄パイプ製ビニール張り。色はグリーンないしは紺。
④メニュー。黒板に白墨書き。字は下手。達筆などもってのほか。
⑤主人。無愛想。多少の不機嫌。多少の偏屈。
⑥妻。同。
⑦服装。Tシャツ。前かけ。前かけに汚れ必要。コック帽、負荷。
⑧インテリア。大型カレンダー。教訓カレンダー。 カレンダーの下に天ぷら油の一斗缶が二缶積み重ねてあるが、 これはインテリアではない。
⑨テレビ、必須。スポーツ新聞、漫画雑誌、必須。
⑩客入店時の「いらっしゃい」などの挨拶、不可。
⑪客注文終了時の「かしこまりました」不可。
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