「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「大地(1)」(パール・バック)

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大地(一) (新潮文庫)

大地(一) (新潮文庫)

 

タイトルと著者は知っていても読んだことがない本ってたくさんあるよね。この本もそうでした。そしてノーベル文学賞を受賞した本を読んだのも初めて。

 

パール・バック「大地」。スゴい!この本は、全4巻だからまだ四分の一だけど、この大河ドラマ級のスケール感!読みながら、なぜか両親やご先祖様のことを、豪雪地帯に生きてきた小野塚一族のことを思い出しながら、感謝しながら読みました。合掌。

 

「19世紀後半から20世紀初頭の激動の中国で大地に生きた王家三代にわたる人々の年代記ピューリッツァー賞ノーベル文学賞をもたらした世紀の傑作」そのエッセンスを紹介しよう。

 
王龍(ワンロン)は、畑の中の狭いうねった小路を歩いて行った。近くに灰色の城壁がそびえている。その城壁の門を入ると、黄(ほわん)家というお屋敷があり、そこに、彼の妻になる女が子供のときから奴隷として使われているのだ。世間では「お屋敷の奴隷だった女と結婚するくらいなら、独身でいるほうがいい」と言うが、王龍が父親に「おれはいつまでも女房が持てねえのかな?」ときいたとき、父親は「どうも世の中が暮らしにくくなっていて、婚礼には大金がいるし、どの女も金の指輪だの、絹の着物をほしがるからな。貧乏人は奴隷をもらうよりほかに仕方がねえよ」と答えたのだった。老人は思い切って自分で足を運んで黄家にへ行って、いらない奴隷はございますまいかと、たずねてみた。「若すぎず、それに、何よりも、別嬪じゃねえので」

 

・飢えがひどく苦しいのは最初だけで、その時期はすでに過ぎていた。畑の土を掘ってきて子供らには食べさせたが、彼自身は食べる気がしなかった。この土を水にとかして、彼らは幾日かの間食べていた。ーそれは多少の栄養分があった〈観世音菩薩の土〉と呼ばれていた。それだけでいつまでも生命をつなぐことはできないが、粥のようにすれば、子供の飢えを一時しのぐことができ、ふくらんだ、からの胃袋を満たすことができた。


「なに?働く?」その男は、ひどく軽蔑した調子で、床に唾を吐いた。「そりゃね、お好きなら、金持を乗せて人力車を曳くんだね。曳いて駆けてると、血の汗が出る。客を待っていると、汗が凍って、氷の着物を着たようになる。おれは乞食のほうがいいね」

 

「旦那様ー奥様!恵んでくださいましー来世のために善根を積んでくださいまし!僅かでも、銅貨でも、お投げくださいまし。ひもじい子供をお救いくださいまし」子供らは、あっけにとられて母親を見つめていた。「わたしが、子供のとき、こう言って、食いつないだんですよ。こんな凶作の年にでしたよ、わたしが奴隷に売られたのは」

 

・女どもは、たえず子供を生んではボロを集めて着物を縫い、畑からキャベツを盗み、穀物市場からひと握りの米を盗み、一年じゅう、付近の山から、草を捜してくる。秋の収穫期になると、刈る人のあとをついて歩いては、鶏よりも敏捷な目つきで、落穂を拾う。小屋の中を子供が通っていく。生まれては死に、そしてまた生まれ、幾人生まれて幾人死んだのか。両親さえ知らないー生きている子供の数さえ知らないのが多い。子供とは、食わせなければならない口として考えられるだけだ。男は少しばかりの銅貨を得るために、どんな仕事でもする。女と子供は、盗む、乞食をする、ひったくる。王龍と阿蘭とその子供たちは、そんな人々の中にまじっていたのだ。

 

王龍は、自分の土地のことばかり思っている。彼は土に生きる人間なのだ。彼には、土を踏んで、春には牛を追って畑をすき、秋には鎌を手に、取り入れをする生活でなければ、生き甲斐がないのだ。

 

・「もし金持が、やつらの持っているものを、すべての人に分配すれば、われわれはみな金と食べ物とが得られるから、雨が降ろうが降るまいが、そんなことは問題でなくなるんだ」

 

・「わたしはみにくいでしょう。だけど息子を生みましたよ。昔は奴隷でしたが、この家へ立派なあととりを残しましたよ。あんな女に、亭主の面倒が見られるもんですか。美しいだけじゃ。子供は生めないんですよ!

 

・「若い人は、やさしくしてくれませんものー激しいだけです。若い人は残酷です。ーあたしは、お年寄りが一番、好きです」

 

・春は幾度も過ぎた。年ごとに、王龍には、来る春がおぼろげになっていった。しかしどんなに年老いても一つのことだけは生き残っていた。それは土に対する愛情だった。彼は土を離れて町へ移り、そして富豪になった。それでも、彼の根は土の中に張っていた。幾月も畑を忘れているが。春が来ると彼はきまって畑へ行かなければ承知しなかった。もう鍬も握れず、何もできず。ほかの人が土を耕すのを見ているだけだったが、それでもなお行かなければ気がおさまらず。出かけるのだった。


・「この馬鹿ものの、のらくらものめ!ー土地を売るだと!いいか、家がつぶれるときだぞー土地を売りはじめるなんてのは。わしたちは、土から生れて、いやでもまた土へ帰るんだーお前たちも、土地さえ持っていれば生きてゆけるー誰も、土地は奪えないからだ。お前たちが、土地を売れば、それが最後だぞ」

  

大地主と小作農、結婚、祈りと先祖礼拝、節約と浪費、親孝行、初めての汽車、障害児、文盲、子育てと教育、纏足、豊作と干ばつ、洪水と災害と食糧危機、女遊び・不倫と浮気、田舎暮らしと都会ぐらし、詐取、儒教と親族、出産と子供の教育、女性の美醜と愛欲、奴隷、略奪と匪賊と強姦、金持と浪費と成り上がり、戦争と革命、老いらくの恋など。

 

人生の教科書としても読める。人間って、生きていくって、食べていくってスゴいことなんだなあ……。激動の2020年に出会えたことに感謝!超オススメです。(・∀・)

 

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大地(一) (新潮文庫)

大地(一) (新潮文庫)