「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「友がみな我よりえらく見える日は」(上原隆)

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ワタシの好きな作曲家・森田公一が率いる森田公一とトップギャラン」の隠れた名曲で「友がみな偉くみえる日」という歌がある。……劣等感のあるワタシは、その気持ちがよくわかる。……周りがみんな頭が良さそうで……オレなんか……って思うときがある。(笑)

 

さてこの本。そのタイトル通りの本。「ホームレス同然の生活を送る芥川賞作家、五階から墜落し両目を失明した市役所職員……人は劣等感に苛まれ深く傷ついたとき、どう自尊心をとりもどすのか。心があたたかくなるノンフィクション」そのエッセンスを紹介しよう。

 
【容貌】
 
・45歳になった時に、木村信子は自分のヌード写真を撮ることを思いついた。自分の体を誰にも見せたことがないって思ったんです」一週間後。写真が出来上がってきた。B4判大の白黒写真が10枚。ちょうど大理石の彫像のような感じだ。ポーズも決まっているし、表情もいい。「美しい」と木村は思った10枚の写真を何度も見てから、大切なものを入れている箱にしまった。それ以後、仕事場などで、写真のことを思い出すと、ちょっと幸せな気分になった。自己満足っていうか、自分の自分に対する記念です」
 
【ホームレス】
 
路上生活者になると最低のところまで落ちたって感じがしてみじめにならない?」私は聞いた。「ならない。何かがあってガックリくると何もやりたくなくなちゃう人間って多いけどオレはそれを逆に考えるんだよ。何でもできるようになったんだって。何でも楽しくなるんだよ。ホームレスになって三年目になるけど、今は毎日目標があって楽しいよ。一日3000円なら3000円円稼ぐまで帰らない。そうやってるから毎日が希望でね。楽しくってしょうがないね。サラリーマンはもうイヤだね。日ゼニで暮らしていくよ。前は自分より他人を助けなくちゃいけないと思ってた。いまは、他人よりも、まず自分を助ける
 
 
芥川賞作家】
 
自分にとって一番大切なものは何か?その大切なもののために他のことを捨てることができるか?オキナワの少年」で第66回芥川賞を受賞した東峰夫は57歳の現在まで自分にとって大切なものだけを握りしめ、そのほかのものはすべて捨てて生きてきた
 
高校を逃げ出したについては、これはもうトルストイを読みすぎたという以外にいいようがないんですよ。高校を退学した時に、ぼくは自分を曲げないって決めたんです」
 
「求職カードの番号がね、6945。今でも覚えてますよ。一日働いて、二、三日休んで勉強するという生活がぼくの念願だったからね。ついに日雇い労働者になれたんだと思うとうれしかったですよ」
 
ぼくの目標は真理って何だろうって探求することだったんです。小説を書くことが問題ではなく、書くことそのものが大切なんです。目標は精神世界をきわめることなんです
 
精神世界だけでぼくは成り立っている。他のことってもうぼくには何もないんです。ぼくは、一生懸命でした。裏表なく。自分の信じる方向に向かってまっしぐら。18歳で高校をやめた時から走り続けている。他の人のことはわからないけど……自分で歩く自分の道は自分独自のもので、ひとりで歩くしかない」
 
 
その他、「友よ」「登校拒否」「テレクラ」「職人気質」「父子家庭」「身の上話(女性タクシー運転手)」「別れた男たち」「女優志願」「うつ病」「離婚」「リストラ」など。
 
 
村上龍普通のことが普通に書いてある。この本は貴重だ自分のこと、自分のすぐ傍にある人のことが既成のメディアでは何も語られていないと思っている人は多いだろうと思う。そういう人にこの本を読んで欲しい。この本は、現実を生きている人のことを正確に伝えている。

 

これはあるようでなかった本。フツーの人にもさまざまなドラマがあるんだね。オススメです。(・∀・)

 

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