今年4月に亡くなった「鉄人」こと衣笠祥雄。山本浩二とともに広島カープの黄金時代を築いたよね。あの!豪快なスイング。そして連続試合出場記録で国民栄誉賞を受賞。
「江夏の21球」で有名な山際淳司が描いた衣笠祥雄の最後のシーズンとは?その苦悩とは?鉄人の、心の内側は、とてもナイーブで傷つきやすく、繊細だった?「衣笠祥雄、星野仙一、根本陸夫、東尾修、荒木大輔、落合博満、田淵幸一、江夏豊。昭和のレジェンドの素顔に迫る、山際淳司・プロ野球短編傑作選」 そのエッセンスを紹介しよう。
・プロはいつも見られている。その中でプレイしている。見つめられながら、いいプレイを見せなければならない。それがプロだと思うんだ。
・衣笠祥雄という選手が、なぜいつまでもゲームに出つづけることにこだわるのか。その「なぜ」にはいつくもの答えがありうる。記録に対する欲。それがもたらすであろう様々な果実。しかしそれだけではない。どこまでやっても、まだその先がある、野球というゲームの不可思議な魅力に、幸いにの、かれはとりつかれてしまったのだ。ぼくはそう考えている。
・エレノア夫人がまだ生きていたら、いい話を聞けたかもしれないな。2130試合という数字を実感としてわかるのは、ルー・ゲーリッグと、それとぼくしかいないんだから。頭で想像してもわからない。数字を見ていたってわからない。毎日のいろいろな出来事、小さな思い出……それを訊くことができたかもしれない。それとね、語りあってみたかったね。
・左の首から肩にかけての鈍痛はキャンプのころから出ていた。カープのチーフトレーナー福永氏「オーバー・スイング・シンドローム」特にどこが悪いわけではない。バットの振り過ぎなのだ。「バットスイングを、もっと減らしたらどうかと、以前から話はしてはいたんです。でもダメでしたね。素振りをしているからバッティングの型が決まるんだ。ここまで素振りをしてきたからヘッドスピードが衰えずにすんだんだといって、相変わらず、振りつづけていた。素振りの数でいえば、もうとっくに百万回をこえていますよ。その結果として、どうしようもなく身体のあちこちに痛みが出てくる」
・ホームランの記録やヒットの記録なら、自分がバッターボックスに立って一本一本、増やしていくほかない。それができるもできないも、自分次第だ。ところが、連続出場は違う。スタメンにぼくの名前を書きこんでくれた監督さんがいる。ぼくがダメになりそうになったときにアドバイスしれくれたり、励ましてくれた人がたくさんいる。そういった人たちに支えられてきたわけですよ。仮にぼくが、もうダメだといって投げ出してしまったら、そういう人たちに申し開きができない。それが一番つらいことだね。
・ゲームに出さえすれば、それだけで「一」がプラスされる。そういう記録じゃないかという人がいる。しかし、それだからこそ、この記録にはデリカシーが伴い、人情の機微が投影される。「この記録とともに歩んできて、ぼくはずいぶん勉強させられた。いろんなことをいう人がる。そういうことも含めて、学んだよ」
その他、「メルセデスにて(星野仙一)」「オールドボーイズ・オブ・サマー(根本陸夫)」「〈サンデー兆治〉のこと(村田兆治)」「200勝のマウンド(東尾修)」「そして今夜もエースが笑う(荒木大輔)」「アウトコース(落合博満)」「田淵の夏の終わり(田淵幸一)」「一本杉球場にて(江夏豊)」など。
マニアックな内容、プロ野球ファンにはタマラナイ!江夏豊の引退試合の話もいいなあ。オススメです。(・∀・)