私が子どもの頃、阪神タイガースは村山実監督。そして江夏豊と田淵幸一がバッテリー。今でも、ジャイアンツのV9の時の最終戦にもつれたデッドヒートが忘れられない……。
さてこの本。「阪神タイガース、苦難の、だが、血湧き肉躍る時代―。タイガース「苦難の時代」を文献資料に基づいて再現する。しかし「記録集」にはしない。あくまで「物語」として主人公を置き、彼らを中心にして記述しよう。その主人公とは村山実、江夏豊、田淵幸一の三人」そのエッセンスを紹介しよう。
・この本は、阪神タイガースが優勝できなかった20年のうちの14年間、1965年から78年とその前後を歴史物語として描くものである。主人公は、村山実、江夏豊、田淵幸一の3人だ。阪神タイガースの歴史には不可思議な事件がいくつもある。その当事者たちの発言は、互いに矛盾し、同一人物の発言すら時期によって変わる。何が真実なのかいまだにわからない事件もあるが、それらは諸説をそのまま提示する。こんな時代があったのか、こんな人々がいたのか、こんな試合があったのかと、血湧き肉躍る「読み物」として楽しんでいただければ、と思う。
・最近「管理野球」という言葉をすっかり目にしなくなったが、それは管理野球がなくなったのではなく、全てが管理野球になったということだ。そういう野球しか知らない世代には、この本のタイガースの野球は信じられないかもしれない。
・1959年3月2日の甲子園でのジャイアンツとのオープン戦。この試合はタイガースの10(藤村富美男)と11(村山実)と23(吉田義男)、そしてジャイアンツの1(王貞治)と3(長嶋茂雄)と16(川上哲治)と、6つの永久欠番となる選手が揃った唯一の試合だった。
・江夏と田淵が引退した翌年(85年)、阪神タイガースは吉田義男のものとで21年ぶりに優勝した。まるで二人が去るのを待っていたかのようなタイミングだった。西武ライオンズとの日本シリーズでも勝ち、阪神タイガースは初の日本一になった。日本シリーズ終了後、江夏と田淵は雑誌の対談で、田淵が「西武、阪神のユニフォームを着た二人にとって、阪神が優勝したのが本当にうれしい」といい江夏が「確かにうれしい。それに管理野球が負けたということは何よりも痛快だ」江夏と田淵は、誰にも何も指示されずに個人が持てる力を出し切って勝つ野球で管理野球に挑み続けた。そして破れ続けたが、時には大きな勝利を得た。そんな野球人だった。
その他、「追放された黄金バッテリー」「73年江夏先発のミステリー〜あと一勝に泣く」「江夏と堀内の150勝競争」「幻の広岡阪神監督構想」「79年小林繁、タイガースへ」など。
あの時代はよかったなあ……野球ファン必読です。オススメです。(╹◡╹)