「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「この世はウソでできている」(池田清彦)

 


この世はウソでできている (新潮文庫)


テレビでよく見る生物学者池田清彦氏。いや〜痛快、痛快っ!タイトルも中身も言いたい放題だけど、理にかなっている。これ、テレビでは発言できないだろうなあ。(笑)(・∀・)


ウソは巨大で組織的なほど見破ることが難しい。地球温暖化からがん検診、果てはレバ刺し禁止まで。「民主主義」というお題目の下、過剰な法規制を敷くことで利益誘導を狙う国家のやり口や、怪しい「科学」を世界の常識にすりかえ、金儲けを企む巨大利権の巧妙な手段を、人気生物学者が次々喝破! 利便や健康の語に踊り、自己家畜化の道を進む現代人に覚醒を促す挑発の社会時評」そのエッセンスを紹介しよう。


・私は大麻取締法は天下の悪法だと考えている。大麻取締法は目的が書かれていない珍しい法律である。大麻には鎮痛やリラックス効果があるけれども、もちろん、吸いすぎたら体に毒である。しかしそれは大麻に限らない。ニコチンだって、アルコールだって、塩だって、大量に摂取すれば健康に悪影響を及ぼすのは当たり前のことで、大麻だけが、特段、体に悪いというわけではない。大麻を煙草のようにふかしている分にはとくに大きな問題はなく、概ね安全だし、大麻を合法にした方がむしろハードな脱法ドラッグが流行らないという他国の調査報告もある。大麻とコカインやヘロインなどの麻薬とはまったく別物なのである。


・近年、自分の息子が大麻所持で逮捕されてしまった俳優が謝罪したことがあったが、大麻を吸ってしまったらしいその息子は誰に直接の被害を加えたわけでもないはずである。せいぜ吸っている本人の労働意欲がちょっと薄まるだけのことである。つまりは、大麻取締法というのは、規制のための規制のようなもので、新興宗教の教義と変わるところがない。吸ってはいけない科学的根拠もない大麻が合法になって困るのはおそらく、大麻を取り締まることを仕事にしている人だけである。彼らは「自分たちがしてきたことは何だったのか」ということになるだろう。それはあたかも禁酒法が解けた直後のアメリカの酒の売買取締官のようものである。


・私は医者になるのに医師免許は不要であると言っている。ほとんどの官庁は無用の長物だと思っているのだが、現実は法律が増えれば増えるほど官庁の力はどんどんと強大になっていく。日本の車検はとても厳しい。それは車検が「安全」と旗印にした国土交通省の利権になっているからである。


石原慎太郎知事が青少年健全育成条例の改定を推進した。性的描写の多い漫画なりアニメなりは青少年に悪影響を及ぼすというわけだけれども、そんなことは誰も証明していない。実際にはその反対で、ポルノ画像や映像がどんどん出回っている影響で、性犯罪は減っている。バーチャルの世界で疑似体験をすればそれをわざわざ現実世界でやる必要性を感じなくなる人がむしろ増えるのだ。


ブラックバスは、肉食で、日本の在来種を食って絶滅に追いやっているというのだが、実際にはブラックバスによって絶滅した生物種はいない。しかし、ブラックバスを駆除しようと言う人たちは「外来種によって生物多様性が脅かされている」と強弁するのである。日本の環境に適応しながら80年以上も生息している。ブラックバスはもはや外来種と呼ぶのが不自然なくらいに日本に定着している生物だと思う。


・酒にしても、煙草にしても、それによって健康を害する恐れがあることは否定しないが、それらを毎日飲むことと、絶つことでは、どちらが精神の健康にいいのか。それは結局のところ本人にしかわからないのだ。煙草を吸うことでストレスを解消できている人が、わざわざそのストレス解消法を捨て、ストレスを抱え込むようになるリスクを増大させてまで無理に煙草をやめなければならない合理的な理由はない


・最近は、他人が座ったトイレの便座に座るのがイヤだという人が多いらしく、便座の上に敷く便座シートと称するようなものを準備しているところもある。しかし比較して言うならばトイレの便座よりも、パソコンのキーボードのほうが何百倍も黴菌がついている。尻は人の体の中で最も黴菌の少ないところのひとつである。ふだん外気にさらされていないのだから、尻の皮膚は手や顔よりずっときれいである。


東日本大震災によって被災した人は、支援してもらわなければ何も生活ができないという現実があった。哲学者の鷲田清一は、近代化とは生活に必須なインフラをすべて他者にまかせていくプロセスのことだと看破したけれども、他社とはすなわち、国や地方自治体や大企業である。水も、食料も、エネルギーも金を払うことによって他者から供給してもらうというシステムの中に不具合が生じると、人々は自分自身の力だけでは生きていけない。もし日本国中が同様の状況に陥ったら誰も助けてくれない。そのときに、どれほどの人がどうやって生き延びることができるだろうか。


近代化に伴いクレーマーが増えるのは必然である。人々は水が出なくなれば水道局にクレームを言い、停電になれば電力会社にクレームを言う。ただただ供給者にクレームを言うことしかHOUHOUがなくなってしまっているのだ。自分で何もできないから、文句をつけること以外に解決方法を思いつかないのである。


その他、「健康を盾にした喫煙者いじめ」「コンプライアンスのウソ」「自分で自分の首を締めているクレーマーたち」「インチキな科学的言説で人をだました典型例「ダイオキシン法」」「レバ刺し規制のウソ」「がん治療をめぐる言説のウソ」「健康調査や健康診断というおためごかし」など。


生物としての人間の生きるチカラが弱まっているんだろうね。オススメです。(・∀・)


 


この世はウソでできている (新潮文庫)