この絵本は深い……短くてシンプルな文章の中に、ドキッとした真実の言葉が溢れている。忘れていたものを思い出させるようなシーンの数々。
「空、風、雪、雨、花、虫、毎日使っているスプーンや靴、そんな当たり前すぎてつい見過ごしている、自然やモノと人とのかかわりを、即物的な目で丹念に捉えなおす。さらにこの絵本には、その先がある。そのモノがそのモノであるために大切なことは何かを、ずばっと言い当て、なるほどと納得させる」そのエッセンスを紹介しよう。
スプーンは
たべるときに つかうもの
てで にぎれて
くちの なかに あうんと おさまり
たいらじゃ なく くぼんでいて
ちいさな シャベルみたいに
いろいろな ものを すくいとる
でも スプーンに とって
たいせつなのは それを つかうと じょうずに
たべられる と いうこと
くつは あしを つつむもの
あるくときに はいた くつは
よるには ぬいでしまい
ぬいだ くつには
ほんの ぬくもりが のこっている
でも くつに とって
たいせつなのは
あしを つつんでくれる と いうこと
グラス、ひなぎく、あめ、くさ、ゆき、りんご、かぜ、そら
あなたは あなた
あかちゃんだった あなたは
からだと こころを ふくらませ
ちいさな いちにんまえに なりました
そして さらに
あらゆることを あじわって
おおきな おとこのこや おんなのひとに
まるのでしょう
でも あなたに とって
たいせつなのは
あなたが あなたで あること
尾崎豊のファーストアルバムの名曲「僕が僕であるために」を思い出す。ジワーッとした感動が欲しい方にオススメです。(・∀・)