「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「人を殺すことはどういうことか 長期LB級刑務所・殺人犯の告白」

人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白 (新潮文庫)


以前、このブログでも紹介した殺人犯の美達大和氏。事実は小説を超える、実に興味深い内容だったね。


「刑務所で死ぬということー無期懲役囚の独白」(美達大和)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20180720


美達氏の本をさらに読みたくなりたどり着いたのがこの本。「「殺人」という大罪は償えるのか。人を二人殺めた著者は今、罪が重く刑期が十年以上の者が収容される「LB級刑務所」に無期懲役囚として服役している。十数年にわたる服役期間に自分の行為を反芻し、贖罪とは何か、人の命を奪った身でどのように残りの人生を「生きる」べきかを考え続けてきた。自身の半生と罪の意識、反省の欠片もない周囲の服役囚について考察した驚愕の獄中記」そのエッセンスを紹介しよう。



人類最悪の大罪を犯す人間とは、本当はどういう人なのでしょうか?斯く言う私はその大罪を犯した本人です。それも時を空けて二人の尊い生命を奪いました。二件とも計画的に実行した確信犯です。


・当時は、殺害するという行為は悪いが、その同期については相当たる理由があると考え、裁判でもその旨を陳述しました。結果は無期刑でしたが、私としてはがっかりしたものです。私の希望は死刑だったからです。


私は「どうして」「どうなってるの?」と異常に知りたがる性質なので、服役するにあたっては、自分のことは棚に上げて、長期刑務所には一体どんな鬼や悪魔がいるのだろうかと関心を持ちました。人が人を殺めるというのはどういう仕組で起こるのか、本当の反省、償い、贖罪とは何なのか、他の人はこの問題にどう向き合っているのか、本音を聞きたかったのです。本来、人は人を殺すのには強い抵抗感がある筈です。それをはねのけ凶行に及んだ人というのはどういう人なのだろうか、一体どういう人達がこの人を犯してはならない最大の過ちを犯すようになったのか、それも合わせて聞いてみました。


生命を奪うということは、生命だけでなく過去の記憶や未来の希望も全て破壊し尽くすということなのです。それ以外にも、さまざまな負の感情を植え付け、歳月の経過と共に風化させるどころか増殖させてしまうことに気が付き、愕然としました。


「獄」という字は、獣や犬がものを言うと書きますが、実際に生活をしてみると、まさにその通りでした。正常な感覚を持っている人間が本当に少ないのです。最低限の倫理観や道徳すら持とうとしない人間たちの集団でした。自分の欲望のためな、他者の生命は全く価値も尊厳もありません。照魔鏡で照らしてみると、多くの悪魔の姿が映っているにちがいないと陰鬱な思いに陥ることもありましたが、私も犯した行為については同じです。


・私自身は、今の命は被害者遺族にお借りしているものと考えていますので、生きている限りは、自分を何か公の役に立てたいという思いが強いのです。その一つの試みとして、私自身のこと、そして長期刑務所に逼塞する人々のことを書いてみました。それゆえ、私が罪を犯した当時のゆがんだ考え、心情もそのまま記述してあります。私自身も殺人犯であり、時に我が身を省みない記述になっていることもありますが、ご容赦ください。


・この時の私の希望は三つです。


1 父より先に死ぬことがないように訴訟進行を考えること
2 毎日必ず知識教養を増やして死ぬこと
3 体を鍛えることを続けること


父より先に死なないというは、最後の孝行です。知識教養は、人はどんな時であろうと進歩、向上がないといけないと標榜しているからです。体を鍛えるのは、死体になった時でも驚かせたいという自己顕示欲の発露と、だらしない体形で死ぬのは嫌だからでした。2と3現在も少しも変わらず続けています。


・Bがまともに働いてもらったとすると、当時の年齢を考えても大体月20万前後から推定しますが、その額なら一回か二回の仕事(泥棒ではなく仕事と言いました)でペイするそうです。時には幸運の女神の気紛れか、50万、100万と手にすることもあり、やめられませんと話してくれました。ベテラン受刑者にとっては服役のリスクはリスクに入らないそうです。


・「大体、下着とかを自分の趣味とか娯楽用に使っているようじゃ甘いですね。下着、ジャージ、制服はついでにアルバムから写真を剥がしてきてその筋のマニアに持ち込むんです。これはちょっと点数が揃うとすぐに10万、20万なります。特に下着は洗濯機から汚れた物を持参のビニール袋に入れ写真を添えれば高く売れます


「20年という刑については、長いですが、やったことを考えると安い(軽い)ですね」


「あんな所にいやがるから殺されたんだ。全くざまあみろだ。だけどそれでこっちは無期だぜ。ちっくしょうめ。正義の味方ぶりやがって。黙って金を出せばよかったんだ」


きっと獄中世界では「話せば分かる」ということは存在しないのだろう。
「二つの殺人事件を起こすまで」は、因果応報について、義理と信条について考えざるをえない。フィクションでは綴られない驚愕の内容。超オススメです。(・∀・)


人を殺すとはどういうことか―長期LB級刑務所・殺人犯の告白 (新潮文庫)