「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「文人暴食」(嵐山光三郎)

    


文人暴食 (新潮文庫)


以前紹介した文人悪食」の続編がこの本。またまたオモシロイよ〜!


「野人・怪人と謳われた南方熊楠の好物はアンパン。人肉嗜好の金子光晴は口腔内の頬肉を食いちぎって試食したというから驚きだ。そして美食家の折口信夫は若い頃のコカイン常用で殆ど嗅覚がなかったし、アル中の極みは若山牧水だった。 ああ、食は人なり。三十七文人の食癖にみる近代文学史」そのエッセンスを紹介しよう。



伊藤左千夫ー牛乳屋茶人】


純愛小説野菊の墓の作者で知られる伊藤左千夫は、その名前から蓮三される繊細でナイーブなイメージとはまるで逆の醜男であった。本名伊東幸次郎という田舎出身の大男が「左千夫」という、およそ顔に似合わぬ筆名をつけ、これまた顔に似合わぬ小説を書いて人気を得たから、歌人仲間は半分あきれていた。左千夫はデブで赤ら顔で、極度の近眼で、着る服にも無頓着な牛乳搾取業者であった。牛乳屋の仕事は一日18時間労働であった。体力を保つためには食わねばならぬ。どんぶりのご飯に牛乳をかけて何杯も食べた


南方熊楠ー山奥の怪人はなにを食うか】


ロンドンでの熊楠は一日一食で、異色を犠牲にしても書物を買い集めてやまなかった。それで「おれは食う物は食わなくても飲み物だけは飲んだ」という。熊楠は裸暮らしで、6月から9月半ばまで一糸まとわぬスッポンポンになった。丸裸のまま一物をブラブラさせて歩くから、新しくきた女中は悲鳴を上げて実家へ帰ってしまった。好物はアンパン。腰の左脇にアンパンを入れた紙袋をおき、アンパンをちぎっては食べた。徹夜のときはアンパンを6つを持って書斎に入った。ニラの味噌汁も好物であった。「わしは明日から味噌汁だけでいいぜ」と言い出したら、高価な本を買う合図であったという。熊楠は吐く。大量に吐く。いつどこでも自在に吐いた。それは吐くものが体内にうごめいていることも意味する。吐く達人は、なんでも食べる達人なのである。


その他、斎藤緑雨ー筆は一本、箸は二本」「徳冨蘆花ー一膳の赤飯」「国木田独歩ー牛肉か馬鈴薯か」「幸徳秋水ー獄中で刺身」「田山花袋ーうどんと蒲団」「高浜虚子ーココロザシ俳諧にありおでん食う」「尾崎放哉ー咳の味」「武者小路実篤ー公家トルストイ」「平塚らいてうー元始、女性は実に偏食であった」「折口信夫ー天ぷら屋になりたかった歌人」「里見紝ーあたまのなかに舌」「金子光晴ー食人鬼の果て」「宇野千代ー男もまた日常の餌」など。


いやいやなんとも個性的な!今の時代、これほどの偏食(!?)の作家はいるのだろうか!?オススメです。(・∀・)!


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文人悪食 (新潮文庫)