「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「孤独の中華そば「江ぐち」」(久住昌之)

数年前、惜しまれつつ閉店した三鷹の老舗ラーメン屋、江ぐち。30年通っていたお気に入りの店だった。
かつて2回、書籍化されているのだが、これはその総集編ともいうべき本だ。


なんか、読み続けているうちに切なくて、悲しくて、泣けてきた…。(T_T) どこにでもある町のラーメン屋さんの一ファンが語るバカ話から閉店にいたるまで…。そのラストの一部を紹介しよう。


気がついたらこの本を書いてから十五年以上の月日が流れた。
ラーメンは本を書いたときの290円から400円になったが、相変わらず安い
店の周囲も変わった。全くなかったコンビニが乱立している。
駅前の名画座「オスカー」、コーヒーがおいしかった名曲喫茶「第九茶房」もなくなった。


だけど、ボクにしか結局のところわからない江ぐちのおいしさはずっと変わらなかった。
だがしかし、江ぐちの内部はここ数年、激動の時代を迎えていた。
麺を打っていた江口正直さんが、高齢により引退。
それにともなってか、おかみさんもすっかり姿を現さなくなった。
オニガワラも体調を崩し、店に出なくなった。
アクマは眼を悪くして仕事ができなくなり引退。


今はタクヤひとり。手伝いのオバチャンがひとり。麺も毎朝タクヤが打って運んでいるようだ。
夜混んでいるときに行くと、はた目にも、相当疲れているように見えて気の毒なときもある。
ああいう店で、なかなか職人の後任はいないのだろうか。
「とうとうひとりになっちゃったよ」
なんだか胸が苦しくなるようだった。


今は、「みたか」というお店になり味を継いでいて、あの味と雰囲気はほぼそのままになっているけどね。私の心にずっと残る名店でした。江ぐちを知っている人も知らない人にもオススメです。