- 作者: 篠原資明
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/12/21
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BOOK〜人生を切りひらく言葉…『空海 人生の言葉』(川辺秀美)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20110220
西洋において、プラトンの哲学が後世に大きな影響を与え続けているが、日本においてそのような存在はいるのだろうか?
実は「空海」しかいないのだ。
空海について思索を重ねてきた著者は、空海思想の基本概念である「風雅・成仏・政治」を日本思想理解のための基本的な視点(基本系)と捉え、さまざまな事 例を通して論ずる。斬新で刺激的な日本思想論。そのエッセンスを紹介しよう。
・まず、プラトン哲学に見いだされる基本形は、美とイデアと政治とからなる基本形である。プラトンの著作を読むとわかるのは、美がイデア世界への最良の導きとされていることだ。そしてこのイデア世界に通じた者こそが、国を統治しうる、すなわち最良の政治を行いうると考えられている。プラトン哲学の基本形の意味を簡単に述べれば、そのようなことになるだろうか。
・では日本の場合は、どうなるのだろうか。美と政治とが、より高いところ、あるいはより深いところへと基礎づけられつつ、関連づけられるような基本形が存在するのだろうか。そう問いかけたとき、空海その人が浮上してきたのである。いやむしろ、空海以外に、これといって思いあたる人物がいなかったというべきだろうか。
・空海の人並みはずれた行動の軌跡をたどるとき、ある種の指針めいたものが浮かび上がってくる。それは「四恩に報いる」ということだ。四恩とは、父母の恩、国王の恩、衆生の恩、三宝すなわち仏法僧の四つをいう。
・空海思想のもっとも哲学的な部分のひとつは、六大体大説であろう。非情から仏にいたるような存在も、地・水・火・風・空・識の六大からなるという主張だ。この説に裏打ちされてこそ、自然を友とするという風雅のありようは、いわば切実で切迫したものとなる。極端な場合には、『三教指帰』の序にしるされるような、星が口中に入る体験ともなるのだ。
・どのような存在も、宇宙の過去を抱懐した現在なのだと。どのような存在も、宇宙の原初以来の「かつて」の先端に立つ。「いま」とは、その「かつて」を包む心なのだ。識すなわち心は梵字の吽で表される。それにあやかっていうならば、「かつて」と吽を吞み込む「いま」、それこそが心なのだ。未来というものがあるとすれば、この心の広がりにしか存在しない。
やっぱり仏教って奥が深い。オススメです。