「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「オレンジの陽の向こうに」(ほしおさなえ)

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今年、全作品読破をねらっているほしおさなえさん。どの作品も何気ないセリフの中に人生の真実のようなメッセージが隠されているのが深いんだよね。(・∀・)

 

さてこの本。この本もいいですよ〜!「同じ家で暮らしているはずの真と棗(なつめ)のふたりは、ある日を境になぜか会えない日が続くようになる。なにかがおかしいと思い始めたころ、あれほど出会えなかったふたりが、ばったりリビングで遭遇する。互いを捜しあっていたことを怪訝に思いつつほっとしたのも束の間、棗は彼が事故に巻き込まれて死んだことを聞く。じゃあ、私が会っていたのは誰なの?死んだ本人ですら気付かないほどリアルな“世界”の秘密を、死んだはずの彼と一緒に解き明かす。すこし不思議なファンタジック・ミステリ」そのエッセンスを紹介しよう。

 

・まず基本的なことを教えよう。ここの世界では、人がうまれることはない。子どもでも成人でも老人でもどこかから突然やってくる。そして、だれも年を取らないし、死なない。だから、ここにいる人たちのここでの人生の長さは、見た目とは関係ない。来てすぐの老人もいるし、何十年もいる子どももいる、ってこただ。
 
・「おばあちゃんが言うにはね……この世界はむかし陰のような場所だった。そこにイワフネさんがやってきて、命が吹き込まれた。この島にじゃなくて、この世界に。単に遠いところ……この世界の場所ってことじゃなくて、なんか、この世界とは別の次元からこの世界にやってきた、みたいな」
 
・「この島にいるせいかな。安彦が死んで、死ってものが……なんだかとても近くにあるような気がして、中合わせってよく言うけど、生まれたときからずっと自分にぴったり寄り添っているもののような気がして……」
 
・「夢っていうか、記憶だな。人々の記憶がイワフネのなかに蓄積されてる、ってこと。イワフネっていう生物を記憶媒体と考えるんだ。ハードディスクとかDVDとかSDカードみたいな。イワフネ自体には脳はないから、考えるっていうのとは違う。ただ記憶している、ってこと」
 
・「伊米は言った。たしかに不老長寿にはなった。楽に金も儲かった。だけど、もう飽き飽きしてるんだ、って。このままの状態があと何十年、何百年と続くんだと考えると、げんなりする。病気にはならないが、怪我すれば死ぬ。だが、ふだんはまわりに人がいてなかなか死ねない。今がチャンスなんだ、だから殺さないか、って」
 
・「棗(なつめ)がいたから、俺になれた。そんな気がする。ずっと自分の生きた跡を残そうってがんばってきたけど、どれも手応えがなった。なにやっても、終わると消えてしまう気がした。大切なのは俺がいた跡を残すことじゃない。人には、そんなことはできない。できなくていい。俺自身が……その時間をしあわせに感じられれば……きっと、それだけでいいんだ
 
「俺たちは生きものなんだから、生きるのが仕事なんだ。生まれて、食べて、増えて、死ぬ。その繰り返し。俺たちに与えられた使命は、ほんとはそれだけ」
 
・お兄ちゃん、恭介といっしょに行っちゃったんだね。ほんとに、オレンジの陽の向こうに、外の世界に、行っちゃったんだね。
 
贈りもの。これは贈りものなんだ、きっと。真とお母さんとイワフネさんからのよくわからないけどそう思った。お父さん、お母さん、お兄ちゃん……理名。わたしはみんなのおかげで今ここにいる。そして、真……。わたしは真のことが好きだったんだ。そう気づいてびっくりした真が好きだった。もう間に合わないけど、スリッパをぎゅっと胸に抱いた。

 

生命って生まれることも死ぬこともないのかもね。人生について考えます。オススメです。(・∀・)

 

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