酒場のギター弾き 小野塚テルの『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「三ノ池植物園標本室 上 眠る草原」(ほしおさなえ)

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三ノ池植物園標本室 上 眠る草原 (ちくま文庫)
 

またまたほしおさなえさんの本。この文章のリズムがいいよね〜。活版印刷とか「金継ぎ」とか銀板写真とか昔からの技術をテーマに、それを深堀りしてそれにまつわる人間関係や成長していくというストーリーは独自の世界だよね。(・∀・)

 

この本のテーマは「植物標本」と「刺繍」。実際に存在してるようなリアルな描写が心を打つ。

 

「職場で心身をすり減らし、会社を辞めた風里。散策の途中、偶然古い一軒家を見つけ、導かれるようにそこに住むことになる。近くの三ノ池植物園標本室でバイトをはじめ、植物の標本を作りながら、苫教授と院生たち、イラストレーターの日下さんや編集者の並木さんなど、風変わりだが温かな人々と触れ合う中で、刺繍という自分の道を歩みだしていく―」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・「骨っておもしろいよね。身体を支える芯みたいないものだけど、持ち主が死んではじめて全体が外に現れる。身体の中身は自分じゃ見られない。肉だって筋肉だって内蔵だって。でも、そういうものは、持ち主が死んだらすべて腐ってなくなってしまう。けど、骨だけは残る。そう。その人が一生かかって育ててきた秘密が結晶化したみたいに
 
・「死ぬときには、その人の頭のなかの世界もきれいさっぱり消え去るのよね人の頭のなかにはだれにも言わないままの記憶がたくさんあるから、それらも同時に完全に来てしまう」
 
言葉は、『言』の『葉』って書くだろう。言葉は、葉っぱなんだよ。
 
・「世界には、さびしいときにしかわからないうつくしさというものがあるよね。街灯が作る光の輪とか、空き地に落ちている錆びたスプーンとか。満たされているときにはなでもないそういうものが、すうっと心にしみこんでくる」
 
わたしたちはミトコンドリアの作り出すエネルギーで生きている。で、このミトコンドリアもともとは独立した生きものだったのが、途中で核を持った生きものに取り込まれて共生するようになった。そのミトコンドリアが女系なんです。子どもがオスでもメスでも、父親のものは排除して、女親のDNAだけを受け継ぐ女性の血筋で図を作ったら、これまでの家系図と全然ちがう図ができますよね。なんだか、不思議ですね。
 
人間の家計は、鎖みたいに玉がひとつずつつながっているんなくて、網みたいなものなんだ。結び目。網のひとつひとつの結び目、それが男女のペアなんだ。おひなさまを思い出すふたつの染色体がからまって、ほどけて、子どもになる。男女のペアはそのときの結び目。結びつきは一瞬だけど、それがくりかえされて網ができる。

 

『恩寵』完全版の改題。人間の歴史やDNA、因果の因を感じざるをえない。下巻が楽しみ。オススメです!(・∀・)

 

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三ノ池植物園標本室 上 眠る草原 (ちくま文庫)