「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「空き家課まぼろし譚」(ほしおさなえ)

f:id:lp6ac4:20210111061730j:plain

空き家課まぼろし譚 (講談社文庫)

空き家課まぼろし譚 (講談社文庫)

 

 正月に小田原の実家に帰ったときに、母が出してきた昔の写真。……懐かしい……おじいさん、おばあさんの写真、子どもの頃の写真。あの頃の風景や色や匂いまで思い出す……わずかな記憶父方の信栄おじいさんの着物姿。豪雪に押しつぶされた新潟の生家。囲炉裏でモチを焼きながら、おじいさんの膝に抱かれていた頃を思い出す。あの頃、母は29歳、父は34歳くらい。おじいさんは60歳手前だから、今のワタシと同じ年ぐらいだ。懐かしくて涙が出た……。(T_T)

 

さてこの本。写真から当時の映像が見える特殊能力のある少女のハナシ。その能力でこれらの写真のあの時の風景にタイムスリップさせてほしいっ!!!

空き家に残された写真と少女の不思議な能力が消えかけている時間と幸せな記憶を呼び覚ます!古い写真に秘められた記憶をめぐる物語――かつて貿易港として栄えた水上都市「海市(かいし)」。街の景観を守るために作られた海市協会には、古い空き家を保存・管理し新しい住人を探し出す「空き家課」という部署があった。ここで働く間宮明(まみや・あきら)はある日、上司の娘・5年生の三上汀(みかみ・みぎわ)とともに、空き家を訪れる。その汀は、場所に刻まれた思い出を蘇らせる、不思議な力を持っていた」そのエッセンスを紹介しよう。
 
自分の死後も自分の大切な記憶がこの世に残っていてほしい。心のどこかにそういう気持ちがあるから、わざわざ写真として紙に焼きつけ、物質として残そうとするんじゃないだろうか。だけど実際には、残されるのはほんの数枚、たとえば仏壇に置いたり、額に入れて壁にかけたりするような記念写真がほんの数枚。それだったらむかしの人が写真館で撮った数枚で事足りる。なのに、人はなぜこんなにたくさんの写真を撮るようになってしまったのだろう
 
不憫なんだ。写真って、撮った人と撮られた人の、プライベートな大事な記憶じゃないか。それが時間が経って、朽ちて、だれにも見られずにゴミになっちゃうのがかわいそうで……。
 
「写真って変なものだよね。ある瞬間が封じ込められている。魔法みたいに。その時間はもうないいし,二度と再現されない。だけど、写真の方はずっとある。そのこと自体がかわいそうだと思うんだ」写真が写るのは単に化学反応によるものだ。だれかが線を引いたわけでも色を塗ったわけでもない。なのにそこの像が生まれる。そして残る。不思議なことだ。
 
・いままで見て来た数々の写真。そのなかに写っていた、実際には会ったことのなたくさんの人たち。世界中の僕の見たことのない無数の写真に刻まれた人たち。写真というものができる前の、写真に刻まれることがなかった人たち。そして、生まれなかった、存在しなかった人たち。僕たちはいまここにいる。どんな人でも、いつかは死ぬ。そして跡形もなく消える。でも、生まれて、つかのまここにいるということだけで、実はじゅうぶん稀有なことなのかもしれない。
 
「ロイヤルサンセットローズ」「まやかし師(黒ダイヤの館、架空本、ボードゲーム)」「オルガン奏者(モスキート音)」「一五〇年祭」、と、どの話も心を打つ。2時間ドラマにならないかなー!オススメです。(・∀・)

 

f:id:lp6ac4:20210111061730j:plain

空き家課まぼろし譚 (講談社文庫)

空き家課まぼろし譚 (講談社文庫)