昨日に引き続き続編。上巻とはまったく違う展開なんだよねー。下巻は。やっぱり土地とか家とには「因縁」があるんだろうね!?そしてこの世界では、言葉では表現できないことがあるんだろうなあ。(・∀・)
「風里が暮らす古い一軒家には悲しい記憶が眠っていた。高名な書家・村上紀重とその娘・葉、葉と恋仲になる若き天才建築家・古澤響、過去の出来事が浮かびあがるうち、風里にも新たな試練が。風里は人々の想いをほどき、試練を乗り越えることができるのか―」そのエッセンスを紹介しよう。
・「ええと」わたしは咄嗟に言った。「なに?」 日下さんがふりかえる。
「わたし、たぶん、日下さんのこと、好きなんだと思います」 一気に口から言葉がすべおちた。 言ってしまってから心臓がぎゅっとなり、 激しくどくどく脈打ちはじめた。
「そ、そ、そう」日下さんが目を丸くする。驚いている。 わたしも驚いた。
「そりゃまた突然だね」呆気にとられた顔だ。「す、すいません… 」
穴があったらはいりたいとはこのことだ。「あの、 ご迷惑でしたよね」
「いや、そういうわけじゃ…ただ、びっくりしただけ。ふつう、 あるでしょう、前ふりみたいなものが」「そうですよね」 激しい後悔に襲われ、うつむいた。
「僕もですよ」頭のうえから日下さんの声がした。 思わず声をあげた。「え、そうなんですか?」「 気づいていなかったんですか?今日だって、だから誘ったのに」
日下さんが呆れたような顔になる。「まあ、いいや。じゃあ、 今日、うちに寄ってく?」
・「こういうことってあるんだわ。真実、ううん、ちがう、 なんだかわからないけど、世界の芯のようなもの。 そういうものがどこかにあると思ってた。むかしは、 その芯に直接触れられそうな気がしたんだけど… 響さんと話しているとね、その感覚が、またよみがえってくるの。 ものをそのものにする理っていうのかしら」
・「なんだかね。自分があの線の塊のような気がするの。 人間じゃない、生きものでもない、 身体のなかがもじゃもじゃした線の塊でできてるみたい」
・「だれかに心をつかまれる、ってあるでしょう?あれって、 弱みを握られるってことなのかもしれない。 相手にがんじがらめにされる。自分はそういいうのがいやで、 避けてきたつもりだった。でも、違ったんだなあ。 つかまれるときは知らないうちにつかまれている。 避けられるものじゃないんだ。怖いことだよね、 人と人がかかわり合うってことは。ゴールも勝ち負けもないし、 正しさの基準もない。なにもかもあやふやだ。でも、 人間にはそれだけしかない」
・「珠子おばさんは言ってた。 ときどき夢に閉じ込められしまう人がいて、 そういう人の夢のなかにはいってほどかなくちゃいけない、とか。 そういうときはたいてい夢がこんがらっていて、 特別手先が器用な人でないとほどけない。しかも、 器用なだけじゃだめなんだって。 それは人の心の糸だから目に見えない。 見えない糸が見える人じゃないとほどくことはできない、って」
・「具体的には、まずその人の夢に入る。それから、鍵を探す、 だったかな。糸の結び目。 こんがらがっちゃった一のいちばんもとになっている結び目だって 言ってた。夢の世界ではそれがなにかの形になっているんだって。 ふつうの、どこにでもあるようなものだって言ってたよ。 鉛筆とか本とかコップとか。 わだかまりがそのものの形を借りている、って言ってたかな。 一見ふつうのものにしか見えないんだねど、それを見つけるのが『 夢見』の仕事らしいよ。夢はほかの人の夢とつながっている。 珠子おばさんはそう言ってた。 そのころは意味がよくわからなかった。だけど、この年になると、 そうかも、と思うときがある」
夢の中で「睡蓮の椅子」を探したい。鍵を探したい。時間を見て、また再読してみたい。なんか奥深いメッセージがあるなー。オススメです。(・∀・)