この本はショッキングだ、感動だ。今年読んだ本の中でベスト3は間違いない。現在、発生する少年犯罪や、事件の「因果の因」は やはりその内面、そして家族にあるのだ!
「連続射殺犯・永山則夫。犯行の原因は貧困とされてきたが、精神鑑定を担当した医師から100時間を超す肉声テープを託された著者は、これに真っ向から挑む。そこには、父の放蕩、母の育児放棄、兄からの虐待といった家族の荒涼とした風景が録音されていた。少年の心の闇を解き明かす、衝撃のノンフィクション」そのエッセンスを紹介しよう。
・世間を震撼させた、 その連続殺人事件は奇妙な共通点があった。 凶器がすべて拳銃であること。 だがその拳銃が22口径というい極めて小さなもの。 極めて小さく殺人を犯すにはあまりに非力なもの。 犯人がその道のプロでないとすれば、 よほどの至近距離から射殺されたものと想定された。犯人は、 東京と京都の被害者から一円の所持金も盗んでいなかった。 動機はいったい何なのか。4人の被害者に共通点はなかった。 怨恨ではない。単なる物盗りでもない。 捜査対象者リストの中にも含まれていない。 警察の総力あえての捜査は、 犯人の存在にかすってすらいなかった。「連続射殺魔」は、 あらゆる人間関係かの磁場からはじき出され、孤立していた。 そういう意味で彼はどこにもいなかった。 いることができなかったからこそ、事件は起きた。 事件が起きて初めて、彼はその存在を認知されることになる。
・「苦しかった…」逮捕された少年が、刑事に心境を聞かれた時、 つぶやいた言葉。ー連続射殺事件の犯人、逮捕。ー容疑者、 永山則夫、19歳。「貧困」 という言葉の裏に隠された真実はそのままに1997年、 永山則夫は東京拘置所の刑場で処刑された。 そして2012年ー長く封印されてきた、 ある鑑定記録の存在が明らかになった。 永山がすべてを語り尽くした膨大な録音テープである。 100時間を超える死者の言葉は、 少年が連続殺人事件へと向かう心の軌跡をくっきりと浮かび上がら せていた。遠い記憶の彼方に見えてきたもの、それは、 ある家族の風景だった、
・石川医師が手掛けた永山の精神鑑定書、いわゆる「石川鑑定」 について調べると、それが日本の裁判史上、 極めて稀な存在であることが分かってきた。 まず驚かされるのは鑑定書の厚さである。 ビッシリと細かな文字で二段組、182頁、 まるで一冊の小説のようだ。 さらにその内容もまた特筆すべきものだった。被告人、 永山則夫が生まれてから事件を興すまでに経験したあらゆる出来事 の詳細と、それに伴う彼の心の軌跡、 さらには犯行後の心境に至るまで膨大な情報を網羅していた。 また永山本人に留まらず、 永山の両親の結婚生活や極めて複雑な兄弟の関係、 永山の父方と母方それぞれの三代から四代前までのルーツを辿り、 まさに永山則夫へと続く一族の系譜まで掘り起こしていた。 しかも鑑定作業にかけた期間は278日間、約9ヶ月。 ひとりの医師による単独犯への鑑定で、 これまで長期間を費やしたものは極めて稀だ。 刑事事件の精神鑑定の9割は1ヶ月以内で終わるというのが平均で ある。これほど細部にわたる、かつ膨大な情報を、 彼はどうやって集めたのか。その鍵はやはり、 永山自身が語った録音テープにあると思われた。しかし、 永山事件の一連の流れの中で、 石川鑑定の存在はほとんど知られていない。なぜなのか。
・(永山)「うん……俺ね、今、夢あるよ。小さな夢なんだけど、 下町っていうかね、そういうとこにね、 犯罪者がいっぱいいるところにね、犯罪者のための文庫、 作りたいっていうか、そういう夢ある。 学校もあるし図書館っていうか、そういうところ……」 この日初めて、永山が自分の過去ではなく、未来を語った。 八王子に来た頃、「無期になるなら死刑がいい」 と語っていた永山が、「夢がある」と言った。石川医師は、 嬉しいような、やり切れないような複雑な感情を持て余していた。 今、重罪を犯した少年は青年になり、やっと自分の言葉を得た。 そして、彼なりのやり方ではあるけれど被害者遺族に思いを寄せ、 生きることの意味を考え始めている。
・当時はまだ「PTSD」 という言葉も概念も知られていなかった。検察は、 このような分析は常識的に理解に苦しむものであり、 単なる責任転嫁にすぎないとした。石川医師が、 先行する海外の研究や自身の臨床医としての経験を持ち出して説明 しても、 それはあくまで仮説に基づく独断的で恣意的な判断だと切り捨てた 。
・「調べれば調べるほど、本当の凶悪犯なんて、 そういるもんじゃないんですよ、人間であれば……」
……一気読みした……。今、永山則夫が生きていたとしたら……夢に向かっているのだろうか。考えさせられる。超オススメです!(・∀・)♪