「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「中継ぎ投手 荒れたマウンドのエースたち」(澤宮優)

全作品読破をねらっている澤宮優氏の野球ノンフィクション。この本も素晴らしい、実に素晴らしい!(・o・)テーマは縁の下の力持ち、「中継ぎ投手」だ。そのエッセンスを紹介しよう。


・本書に出てきた9人の中継ぎ投手たちが大事にしたものは、すべて違っている。防御率という投手もいれば、試合数という投手もいる、数字にはこだわらず、三振を奪うこと、それも空振り三振がいいという人もいれば、見送り三振を奪うのが理想という人もいる。三振よりも一球で併殺にすることが理想だという人もいる、同じものは一つもない。これだけ人によって価値基準が違うということは中継ぎ投手の評価を完璧に行うのは困難なのだという現実を、露わにしている。


中継ぎ投手は、先発投手と抑えという光の当たる投手たちに繋ぐ黒子である、連日準備し、連日投げる。準備を重ねたが、投げられない日もある。逆に、負けている試合でも当然のように投げる。そのため故障と背中合わせの毎日でもある。一方で数字に現れないが、試合の重要な局面で投げるから彼らは陰のエースでもある。


野球に限らず、どの世界にも表には出ないが、大事な試合をやり遂げるのに、組織に欠くことのできない人たちは多くいる、そんな陰の世界で自分に与えられた役割をこなす象徴的な存在として中継ぎ投手を取り上げた。目立たぬもの、日陰にあるもの、しかし懸命に生きている者へ目を向けるということ。そんな世の中になってほしいという思いから、執筆を思い立った。


・先発投手から抑え投手に繋ぐ役割の投手を“中継ぎ”と呼ぶ。現在は勝ち試合に投げる投手をセットアッパーと呼び、抑え投手にバトンをつなぐ重要な役割を担っている。
彼らは先発投手や、抑え投手のように脚光を浴びることはない。勝ち星や防御率、セーブなどの記録もあまり付かない。彼らはほぼ毎日ベンチ入りし、いつ登板命令が下るかわからないから、何度もブルペンで肩を作る。しかし先発投手の調子がよく、登板しない日もある。あるいは突如投手が崩れて、準備不足のままマウンドに上がるときもある、


・彼らの年間の登板数は、およそ40試合から60試合、多いときは70試合を超える。先発投手の登板数が25試合だから、その試合数は常軌を逸している。しかも多くがピンチの場面だから、並外れた体力と精神力の強さがなければ務まらない。まさにプロフェッショナルな専門職である。彼らの苦しみ、困難さ大変さ、喜び、そして誇り、挟持、哀しみ。取材のとき、彼らの多くが本音を言ってくれた。「でもね、一度はきれいなマウンドで投げてみたいですよ」そこには美しくも、壮絶な投手の物語があった。


石井弘寿 日本人最速左腕」


平成14年に球団最多登板である金田正一の68試合を抜く、69試合に登板し、防御率は1.51、投球回数89.2回、奪三振109だから、イニング数よりも三振が多いという驚異的な数字だった。ボールがよく飛ぶ時代にもかかわらず、石井は打者に力勝負を挑んで勝利していたのである。


とくに一回のみを投げるときは、三人すべて三振にとることを目標とした。三者三振だが、彼らはバットに掠りもしなかったことで相当な屈辱感を味わう。相手チームも意気消沈する。それが石井の快感だった。
毎日の試合でも特別な快感でしたね。ただ抑えるのではなくて、相手をねじ伏せ、打撃をさせないわけですから。打球が前に飛ばないということはそれこそチャンスがないわけです。向こうに行きかけた流れを断ち切って、こっちに持ってくるというのが僕らの仕事ですからね」石井は自分が投げた回数以上の三振を奪うことを目標とした。


プロ野球選手は、自分から望んでできる仕事じゃない。自分が望んで、しかも周りにやってくれと言う人がいてできる仕事なんですよ(木田優夫


・やはり野球人生を振り返って中継ぎでよかったと思います。そこに自分の居場所があったわけだから。周りがね、僕の成績を見て大したもんじゃないと言うけど、僕はプロで実働13年間もやったという誇りもあります。世間ではそんなに認知されていないポジションですが、その面白さを僕が最初に知ったし、そういう誇りは強くありますね。(佐野慈紀


・一年間を通して50試合、60試合投げても、絶好調のときは1,2試合しかないのですよ。どうしても体の動かない日もありますし、それを言い訳にできないんですね。そうするとメンタルです。気持一つで自分のリズムに入らなければ、いい球はいかないのですね。(篠原貴之


その他、河原純一 二度蘇った“ミスターゼロ”」「木田優夫 国境を超え不惑も超えた145キロ」「佐野慈紀 ピッカリ投法で中継ぎ初の1億円投手」「鹿島忠 “ケンカ野球”の鹿島大明神」「篠原貴之 14勝1敗、最高勝率の“不敗神話”」「吉田修司 史上初の100Hが支えたダイエー黄金期」「吉田豊彦 流浪のサウスポー」「福間納 幻の最多登板日本記録など。


もうすぐ球春到来だね。開幕が待ち遠しいね。ワクワク。プロ野球がますます楽しくなります。オススメです。(・∀・)!