今年、全作品読破を狙っている村山由佳の小説は実にエロチックで優雅だ。特にこの本は12の恋愛のタブーに挑んだ本。
「ミズキさんでないと、だめな軀になっちゃうよ」。弟を愛するあまり、その恋人・千砂と体を重ね続けるミズキ。千砂はその愛撫に溺れ――(「最後の一戦」)。女子高のクラスメイト、年下の同僚、叔母の夫、姉の……。欲望に忠実だからこそ人生は苦しい。覚悟を決めてこそ恍惚は訪れる。自らの性や性愛に罪悪感を抱く12人の不埒でセクシャルな物語。そのエッセンスを紹介しよう。
・人間だって動物なんだから、雄と雌でいたかったら、二人して同じ匂いを漂わせちゃ駄目。同じ巣穴で暮らしてても、ふだん使うシャンプーとかボディソープはちゃんと分けないと。それと必要なのは、あと少しの我慢と忍耐かな。自分だけが我慢してるって思わないこと。たぶんお互い様だよ、そういうのって。
・自分の性的嗜好なんか、知らなければよかった。ほんとうに美味しく思えるものを知ってしまうと、それ以外のものはまるで、目隠しをして味わうスープみたいだ。
・たまたま会えない日が何日か続くと、情けなく萎れて何をする気も起きなくなってしまう。まるで鉢植えの花火みたいだ。柾之のあそこから直接に注がれる濃い液体だけを待ちわびて、その時だけかろうじて花を咲かせる植物。鉢の根もとに逆さに挿す栄養剤のアンプルみたいに、私は柾之のあれをずっと挿していたくてたまらない。大きくて硬くて、私の中をいっぱいに満たしてくれるあれを、彼がずっとあそこに挿したままでいてくれたなら、このままきれいな花を咲かせ続けて永遠に枯れずに済む気がするのに。
・彼の指や舌にかき鳴らされるたび、彼のたびに歌う楽器になる。私の唇からこぼれ続ける反語のほとんどを無視しながら、彼は自分の好きなように動いた。後ろから壊され、前から揺さぶられて、私は嵐の海の小舟みたいに波間を上下し、投げ出されて溺れかけては必死で彼にしがみついた。
【解説ーとろける笑顔の裏の、タブーを味わう覚悟】(片山裕美)
・物語ごとに手を替え品を変え、いろんな角度でタブーに細かく切り開いて見せていくストーリー。ごく好きなタイプのタブーだったり、時に嫌悪感に近い罪悪感を感じてしまうテーマだったり、読むごとに、自分の恋愛倫理観や恋愛癖がなんとなく見えてくる展開。そして必ず登場するセックスシーンの、緻密で、美しく、エロティックなこと!これは恥ずかしがっていたり、周囲を気にしたりしていては満喫できません。思い切り集中できる環境で、どっぷり浸ってじっくり味わって、村山ワールドを堪能しなければ損です。先日、久しぶりに村山さんとお会いしました。ますます品よく若々しく、見惚れてしまった。やはり、欲望の蜜に浸り、タブーを味わう覚悟を決めることができる女の美しさは凄みがあります。そして私はまたまた妄想の渦に飲み込まれてしまうのです。「いつか、何かのはずみで村山由佳さんとエッチしてしまうかもなぁ」と。
「タブーを味わって」みたいもんだねえ。オススメです。(・∀・)